明学大 被災地の郷土史料 データ化へ 津波で現存2冊の「吉里吉里語辞典」
明治学院大学(東京都港区)が、岩手県大槌町吉里吉里(きりきり)地区の方言が収録されている「吉里吉里語辞典」のデータ化に取り組んでいる。同辞典は東日本大震災の津波により流され、現存は2冊のみ。同大を中心に、多くのボランティアが郷土史料を蘇らせようとしている。
データ化プロジェクトの発起人は同大社会学部の浅川達人(たつと)教授(46)。プロジェクトを立ち上げた6月26日から、学生や職員など延べ69人が協力している。
吉里吉里地区は同県中部の海沿いに位置し、作家だった故・井上ひさしの著作「吉里吉里人」でも知られる。
同辞典は吉里吉里に生まれ育った関谷(せきや)徳夫さん(79)が10年をかけて作った。2007年に初版と二版の計1000部を発行したが、多くが津波で流されたとみられ、現在確認できているのは2冊のみ。方言8000語超が掲載されている。
同大は震災後、継続的に学生を被災地に派遣している。浅川教授も学生とともにボランティアを行い、その中で徳夫さんの息子である晴夫(はれお)さん(47)と出会った。前から辞典のデータ化を考えていた晴夫さんが浅川教授に依頼した。
吉里吉里語では、「淦(あか)(船底にたまる水)」を「あが」と発音するように、語中の「カ行」は有声音化して「ガ行」となる。そのため、「上がり」(「時間的に〜の後に」の意)のように本来の「ガ行」が語中にきた場合は、すべて鼻濁音化して「あか゚り」と発音し、区別するのが特徴。浅川教授は「『淦』のような言葉からは、吉里吉里の人が海に密着した生活を送っていたことがわかる。辞典をデータ化し、言葉を残すことは生活を守ることにもなる」。徳夫さんは「言葉を保存してくれるのはありがたい」と話す。
データ化は、浅川教授が現物からスキャンした画像をもとに、協力者が文字データにする。完成は1年ほどを想定しており、現地の人の音声データも盛り込みたい考えだ。同大横浜キャンパス(上倉田町)に通う宮尚美さん(2年)は「何か支援したいと思っていたが、これなら現地に行かなくてもできる」と協力している。データ化は一般の人も協力可能。詳細は同大ホームページで。
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4月18日