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大和 コラム

公開日:2024.12.06

徒然想 連載321
花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄

 今月は、夫れ門に件あり、空あり。件に非らざれば以て門を標すこと無く、空に非ざれば以て通致(つうち)すること無く、空に非ざれば以て通致すること無し。件は灰燼(かいじん)すべくも、空は焼くべからず、です。

 出典は、中国隋代、天台智顗(てんだいちぎ)『法華文句(ほっけもんぐ)』。

 意は、すべて門には門の形があり、その空間がある。形がなければ門であることを表せず、空間がなければ門であることを表すことができないし、空間がなければ門を通り抜けることはできない。門の形が焼けても、空間の働きは焼けない、ということです。

 ここでは門に喩えているが、全ての物事にこの道理は通じる。形は使い道に応じて自在に変わり、工夫の如何によって空間の取り方も変わるのです。

 優れた趣向や発想も、それを実現する形がなければ成就しない。表現された形はある程度は鑑賞に堪えるものとなるが、それまでのもの。一定の形から離れれば、意匠は自由に働き、次々に新しい形を生んでいくでしょう。文言にある、形は焼けても、空間は焼けないというのは、そういうことなのです。

 来る年が読者各位にとって、より佳き年でありますようお祈り申し上げます。

桃蹊庵主 合掌

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