谷戸地域の空き家を改築したシェアハウス(賃貸共同住宅)に、昨年10月から県立保健福祉大学の学生が住み始め、地域活動に参加している。横須賀市と同大学の協働により今年度から進められている事業で、市はリフォーム費用の一部を助成し、家賃も補助している。対する学生は、活動を通じて地域に溶け込みながら、ゆくゆくは高齢者の生活支援をすることも視野に入れる。高齢化率の高い町に若年層が仲間入りしたことで、新たな交流が生まれている。
12月16日午前8時。京急汐入駅から程近い汐入町5丁目2区に、「防犯」と書かれた緑色のウェアを着た若い男性の姿があった。内田匡紀(まさのり)さん(20)と奥津光佳さん(19)の2人。昨年10月からここに住み始めた保健福祉大の2年生だ。この日は月に1度の資源ごみ回収の日。2人は地域住民らと一緒に、各家の前などに出された新聞やダンボールを集めて回った。
ひと段落すると、運搬するトラックが収集場所に到着した。大通りから徐々に道幅が狭くなり、ここまでは1台が通れるほど。路地の奥は行き止まりや急な石段もある。丘陵地の谷あいに形成された「谷戸地域」の特徴のひとつだ。
空き家の有効活用
市内に点在する谷戸地域では高齢化が進み、空き家も増えている。中でもこの汐入町5丁目2区は空き家率が18%と高く、3人に1人以上が高齢者という状況。町内会長の広崎勝裕さん(72)は「重機が入れないため、宅地開発ができないことが大きいです」と話す。
こうした中で今年度、谷戸の住環境対策として、ここをモデル地区とする事業が市と同大学の連携で始まった。市が空き家の所有者にリフォーム費用の3分の2(上限100万円)を助成し、住む学生には家賃を月1万円補助する。代わりに学生は、地域活動に参加するというものだ。
内田さんと奥津さんは、平屋建て50平米の空き家の改築後、シェアハウスの形で住み始めた。ここは約200段の階段を上がった高台にあり、約10年空き家だった。10月の入居以降、2人は資源ごみ回収のほかに公園清掃や防犯パトロールにも参加しながら徐々に町内に溶け込んでいる。
「福祉」の実践に
地元の藤沢ではあまり地域の活動に参加していなかったという内田さんは、「皆さんとの触れ合いは純粋に楽しいです」と笑顔を見せる。また、入居するまで南足柄の自宅から片道2時間以上かけて電車通学していた奥津さんにとっては、その時間を勉強や地域貢献などに使える。今後は買い物に不自由している高齢者のために、インターネットでの注文を手伝うことも考えているという。大学では、内田さんは社会福祉、奥津さんはリハビリ療法を専門に勉強している。将来、福祉の世界に身を置くことになる2人にとっては、こうした交流が地域福祉の実践の場にもなっているようだ。
空き家減り防犯に
市都市計画課の担当者によると、この事業は空き家の家主にも喜ばれたという。リフォーム費用の自己負担があったにもかかわらず、「愛着がある家なので壊したくなかった」と、2人の入居を歓迎した。
広崎さんは「若い男子学生が住んでくれたので、防犯面でも心強いです」と話し、「周りの高齢者もまだ多少遠慮している所があるので、2人に生活の補助を頼めるくらいに、時間をかけてお互いに打ち解けてくれれば」と期待している。
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