東日本大震災の犠牲者を追悼しようとアウトリガーカヌーで巡礼の旅を行った デューク金子さん(本名:金子謙三さん) 葉山町下山口在住 48歳
簡素に、シンプルに
○…全ての命あるものに愛と感謝をこめて―。今年7月に熊本県水俣市を出発。愛用のカヌーに乗り4ヵ月に渡って手漕ぎだけで九州〜葉山間約2400Kmを航行した。「人力で海を渡ることで、人間と自然が一体であることを呼びかけたかった」。先々の砂浜や神社で冥福の祈りを捧げる日々。道中、電力会社にも立ち寄り、自然エネルギーへの転換を求める意見書を提出するなど脱原発を訴えた。
○…今回の巡礼をするにあたってテーマに掲げたことがある。「No Nukes Live Simply」(簡素にシンプルに)。犠牲者への追悼はもちろん、伝えたかったのは原発の脅威と過剰に物を希求する現代人への警鐘だった。「今回の事故は完全な人災。犠牲を無駄にしないためにも、僕たちは意識を変えていかなくてはいけない」。自然とともに生き、自然への畏敬を忘れなかった古代の日本人。そのシンプルに生きる姿の中にこそ現代人に一番必要なものがある。だから自身も手漕ぎの旅を選び、最低限の水と食事以外何も持っていかなかった。「冒険とか挑戦とかそういう意識はないんです。昔の人は皆そういう旅をした」。
○…長崎県出身。19歳の時、アメリカに憧れ渡米した。カヌーに出会ったのもその頃。クラブで出会ったハワイアンと関わる中で、競技としてではなく、その精神性に魅せられた。「武士道みたいに『カヌー道』みたいのがあって、それが今でも自分の根っこにある」。現在自身も葉山でカヌークラブを主宰。カヌーと通じて子どもたちに自然の素晴らしさを説いている。
○…元々は福島第一原発そばの双葉浜を終着点にしていた旅。現在は葉山の海で祈りを捧げる日々だが、20Km圏内の警戒区域が解除され次第、旅を再開する予定だ。「僕たちは未来の子どもたちに安全な海を残す責任がある。活動を通してそのことを多くの人に伝えたい」。昼下がりの一色海岸。視線の先にある葉山の海に柔らかな笑みを浮かべた。
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