本紙では、昨年新たに町長に就任した山梨崇仁葉山町長に新春の特別インタビューを行った。就任直後から職員との対話や町民への情報発信などコミュニケーションの推進を掲げた山梨町長。町長として1年の歩みを振り返ってもらうとともに、ごみ問題、財政対策など町喫緊の課題についても触れてもらった。(聞き手・本紙編集長 佐藤弦也)
「情報交換、コミュニケーション密に」
--まずは町長に就任して1年が経ちますが、昨年1年間を振り返って下さい。
「昨年は就任してから1日も欠かすことなく公務に携わる中で、町で起きている様々なことを実際に自分の目で見ることができました。自分の進めようとした改革の方向性は間違いではなかったと認識しています。選挙前に示したマニュフェストについても着実に1歩1歩達成していけるように尽くしていこうと、日々、心新たにしながら過ごした1年でした」
--この1年で自分が掲げた課題に対してどの程度達成できたとお考えですか。
「全体感では大きく基礎固めができたとは考えています。今年から順次花を咲かせていく段階。行政内部においては、組合との交渉という難関を超えることが出来たのは大きな成果でした。他にも様々な山を越えたことで互いに信頼関係もできたのではと思っています。課題に対して達成したという意識ではなく、大きな目標に向かって、ステップを一つ一つ超えていったという感覚です」
--PPSの導入、特別職の給与見直し、職員の定期昇給の凍結など財政対策を行いましたが、財政面で振り返っていかがでしょう。
「私は就任当初から横浜方式のプライマリーバランス(※)の採用を掲げていますが、今年度はその枠を揺るがすことなく2700万円ほどの余裕を持って来年度を迎えることできます。財政状況が厳しい中皆さんの我慢があってこそですが、着実に借金を減らす第一歩だと思っています」
--防災対策についてです。昨年3月に県の浸水予測見直しがあり、町では2万人以上の避難人が発生するとの予測もありますが、今後町として防災対策をどう進めていきますか。
「町では現在、防災行政無線付け替えのための実施調査を進めています。これは来年度には全て終わる予定です。それから昨年12月には浸水予測をもとに改訂した津波ハザードマップを全戸配布しました。また、3月までには町内会を通じて災害の『防災ブック』も全戸に配る予定です」
--「防災ブック」とはどのようなものでしょう。
「津波や地震に限らず火事、風水害、土砂災害、応急手当など緊急時の対策を1冊にまとめたものになります。各家庭でご家族皆さんがご一読いただき、普段から緊急時の備えをしていただきたいと思います」
--建物や資機材などハード面の整備は費用、時間の面でも長期的になると思いますが、いわゆるソフト面についてはいかがですか。
「町内会との連携がキーになると考えています。葉山は地域の団結力も高く、防災訓練でも毎回多くの人が参加されています。今後も各町内会と連携を図りながら、災害対策を拡充していきます。また昨年、葉山町でも社協が主体の災害ボランティアネットワークも立ち上がりました。役場職員の訓練の充実と併せ、実際の災害時の体制強化を進めていきます」
--就任直後、職員との対話を進めていくとお話していました。
「昨春に全28課との対談を実施しました。以降、職員個別にも窓口を開き、色々な意見があがってきています。今後もコミュニケーションをさらに太くしていければと思っています」
--町民サービスを向上させようと設置した接遇向上委員会も現場の声を吸い上げようというものでした。20項目の提言がありましたが、それについてはどのように捉えていますか。
「基本的にほぼ9割がたはそのようにすべきと感じています。例えば、提言をもとに、庁舎1階のレイアウトもがらりと変わる予定です。予算がかかることに関しても順次、検討を進めています」
--公募で5年ぶりに副町長を据えました。
「副町長に期待することは行政内の規律を正してもらうことです。学者であり専門家である今の副町長にはそのために来ていただきました。現状では機構改革や人事評価、新しい行政評価のあり方などについての提案、細かい事業の進め方についても計画立ててこなす意識づくりを進めてもらっています。そういう点で、望んだものを果たしてもらっていると思っています」
※基礎的財政収支。行政費用を借金せずにどの程度まかなえるか示す指標。
今年は子育て支援に力点
−ごみ処理広域化からの脱退に伴う裁判の控訴審決が出ました。一審に続き、葉山町の395万円の賠償という結果についてはどう捉えていますか。
「(債務不履行とした一審判決を高裁が否定し)町の主張の一部が認められたことは尊重したいと考えています」
−一部報道が2市が上告する姿勢だと伝えています。町の今後の対応は。
「対応については横須賀市議会としての正式な決定が決まった上で検討します。ただ、葉山町としてはこれ以上、裁判で争うつもりはないというのが基本線です。重要なことは争いを終結させ、三浦半島でのパートナーとしての関係修復に努めることです」
−ごみの減量化が重要課題ですが、町としての今後の取り組みを教えて下さい。
「可燃ごみの減量化は環境面からもコスト面からも全力でやらなければなりません。2月にごみの戸別収集を現在の2町内会から5町内会に拡大します。これは減量化と資源化に併せて、地域福祉の向上にも寄与するでしょう。今後は収集上の検証をし、終わり次第全町実施に向けて速やかに移行していきたいです」
−来年度の予算編成の見通しを教えて下さい。
「歳入についてはほぼ横ばい程度の見込みです。歳出として主だったものでは、大幅な経費削減の見込めるし尿投入口の建設、また小児医療費無料化を公約通りの小学校6年生まで引き上げるのか、行政内での議論が最終段階に来ています」
−2013年、どんな年になりますか。
「今年は『子育て』をテーマに行政運営していきます。保育園の新設や小児医療費無料化もそうですが、教育や子育てに絡む地域のまちづくりなどに力を入れていきます」
−3万4千人、町民へのメッセージを。
「昨年は町の活力を肌で感じ、自分自身が町の将来に夢と希望を感じました。今年はそれを多くの皆様と共有できるよう、政策に、情報発信に力を入れねばなりません。町のいまと将来を考え、具体化する仕事を預かって1年。お金はなくてもできることはたくさんあります。引き続き多くの皆様のお力をいただきながら、大好きな葉山町を夢と希望のある町へ盛り上げていきましょう」
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