JR北鎌倉駅に隣接する素掘りのトンネルについて、鎌倉市が昨年決定した開削方針に基づき、「安全対策工事」を実施する事業者がこのほど決まった。
一方、住民らが市長を相手に「開削工事に公金を支出することは違法」として工事差し止めを求める訴えを横浜地裁に起こしたほか、市民団体が保存と安全を両立するための具体策を市に提言するなど、トンネルの保全を求める市民の様々な運動も続いている。
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鎌倉市は1月19日、「北鎌倉隧道安全対策工事」の一般競争入札を行った。その結果、(株)斉藤建設(市内扇ガ谷)が落札し、同月26日に市と請負契約を結んだ。今後は3月中旬に工事に着手し、7月中旬までの竣工を目指す予定という。
市民が市を提訴
トンネルの保全を求める市民の動きも活発化している。市民22人が1月15日、鎌倉市長に開削工事の差し止めを求める訴えを横浜地裁に起こした。
訴状によれば、市民側は同トンネルを「歴史的価値のある建造物で、鎌倉市にとって重要な観光資源」と指摘。その一方で「開削した場合と改修保存した場合の経済的効果やデメリット等の比較検討が十分になされていない」などとして「トンネルの安全対策工事に公金を支出することは、財産の効率的運用を定めた地方財政法に違反する」とした。
原告の一人、岩田薫さんは「このままでは工事が進んでしまうと思い、提訴に踏み切った」と話す。この裁判の第1回口頭弁論が3月23日(水)、横浜地裁502法廷で行われる。午前10時40分から。
市民団体が保全策提言
北鎌倉駅そばのトンネルの保全運動で、中心的な役割を果たしてきた北鎌倉緑の洞門を守る会(北鎌倉史跡研究会・出口茂代表)は2月2日、市監査委員に対し、工事への支出差し止めのために必要な措置をとるよう求める住民監査請求を行った。
また同月4日には、「緑の洞門(北鎌倉隧道)保存・安全対策の提言」を市に提出した。
ここでは、逗子市が安全確保と景観を両立する形で保存している名越切通の例をもとに、工法などについて具体的に提言。「大切な景観である岩塊を壊した上に、その削り取った崖に対して景観と安全性を確保するという不条理な工事に膨大な費用をかけるよりも、洞門をこのまま固めてしまう方がよほど安価に、景観と安全性を確保できる」としている。
出口代表は「この提言に基づいて、市が工事着工を止め、保存に向けて再検討するよう働きかけていきたい」と話す。
専門家が価値検証
トンネルが掘られた岩塊や尾根について、歴史的価値を再検証しようというイベントも行われる。
これは鎌倉に関する研究者らで作る「北鎌倉・円覚寺の谷戸景観の保存を求める有志の会」が主催するもの。「鎌倉・研究ライヴ!円覚寺の奇跡」と題し、2月13日(土)に鎌倉生涯学習センターホールで。時間は午後2時から4時30分。
第1部では伊藤正義さん(鶴見大学文化財学科教授)が、14世紀に描かれた円覚寺境内絵図(国重文)と一致する現在の景観について講演。第2部では「鎌倉研究の第一人者」、高橋慎一朗さん(東京大学史料編纂所教授)と馬淵和雄さん(日本考古学協会会員)が互いの研究成果について解説する。第3部は専門家らが、円覚寺境界尾根の価値や市内に点在する結界などをテーマに議論する。
「市内の文化財について改めて関心を持ってもらえれば」と主催者。参加費は1千円(18歳以下は無料)。問い合わせは【携帯電話】090・5811・7646へ。
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