鎌倉市はこのほど、JR北鎌倉駅そばのトンネルの安全対策について「現在の工法を見直す」方針を明らかにした。同トンネルをめぐっては、先日開催された市文化財専門委員会で「掘られた尾根に文化財的価値がある」とする結論が出されていた。市は今後、仮設工事で通行できるようにしたうえで、文化庁と協議しながら恒久的な安全対策を検討していくとしている。ただ、昨年8月に実施を決めた開削工法について、中止の明言は避けた。
鎌倉市は7月25日、市議会全員協議会でトンネルに関する今後の対応について報告した。
松尾崇市長は、7月8日に開かれた市文化財専門委員会で「トンネルが掘られた尾根は円覚寺境内絵図に描かれた境界として文化財的価値を有する場所であり、国指定史跡の指定を図っていくべきである」とする結論が出されたことを受けて「現在の工法を見直し、できる限り尾根を残す形での安全対策工事について検討する」とした。
今後については、新たな工法を検討し工事を実施するまでに時間がかかること、多くの住民や通学の小中高校生が利用する生活道路であることなどから、まず仮設工法による安全対策を実施して、早期に通行を確保するとした。工法については、市が2014年度にも検討したライナープレート(波型の薄い鋼板)でトンネル内部を覆い、隙間をモルタルで埋めるやり方を検討しているという。
恒久的な安全対策については、仮設工事を実施後、過去に専門機関から提案を受けた工法を基本に設計を進め、史跡の追加指定に向けた調査・研究についても、文化庁の助言を受けながら進めるとした。
議員から反発も
報告を受けた議員からは「これまでトンネルが掘られた尾根には文化財としての価値がない、という説明を受け、開削に関する予算も可決してきた。議会の存在意義を失わせるもので、裏切られた気持ちだ」という意見が出された。
これに対し市は「尾根はトンネルが掘られたことなどからも本来の形状が損なわれており、史跡として指定し保護する価値はないと考えてきた。今年度に入って文化庁から指導を受けるなかで、前提が変わったため判断も変わることになった」と説明した。
また仮設工事の実施により、トンネルの通行が可能となる時期については「遅くとも来年1月までには」とした。
ただ「開削工事は中止でいいのか」という質問には「中止も含めてできるだけ尾根を残す方法を、文化庁とも協議しながら検討していきたい」と話すにとどめ、明言はしなかった。
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