移動スーパー「とくし丸」を走らせる 金子 航大さん 中井町田中在住 23歳
買い物の喜び届ける
○…特別仕様の軽トラックに生鮮食品や総菜、日用雑貨など約400品目を積み、運転席へ。しまむらストアーたちばな店=小田原市中村原=を拠点に、昨年11月から同市と近隣の二宮町と中井町で1日約20軒を回る。顧客の多くは、買い物が困難な高齢者。「『来てくれてありがとう』『頼りにしている』といわれるたびに、生活に密着したこの仕事をやって良かったと思う」
○…進路に迷っていたとき、同店で「とくし丸」の個人事業主を募集する貼り紙が目に飛び込んできた。「自分がやりたいことはこれだ」。高校生のころに経済ドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」で「とくし丸」を知り、困っている人の役に立つ仕事にひかれ続けていたことが、心を決めさせた。学生時代に接客販売のアルバイト経験はなし。顧客がついてくれるか不安はあったが、起業の挑戦に家族も応援してくれた。
○…「週1〜2回の買い物をイベントのように楽しみにしてもらえる」。自分の目で品物を選ぶ喜びや旬を実感してもらえることも移動スーパーの仕事のやりがいだという。季節や天候に応じて商品を仕入れ、「まだ手探りの状態。お客様の好みをしっかり把握して、要望に応えていきたい」と話す。「売り過ぎない」商売を心掛ける。一人暮らしや小食の高齢者が食材を使い切れなかったり、食べ切れなかったりして買い物が無駄にならないようにとの配慮から。祖父母を思いやる孫のような青年は、謙虚で誠実だ。
○…中井町出身。アイルトン・セナ選手のファンだった母の影響で、休日はF1観戦などをして過ごす。オフのドライブの相棒は電気自動車。大好物のスイーツで鋭気を養い、明日も「とくし丸」を走らせる。
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2021年4月2日号