「老人を敬愛し、長寿を祝う」敬老の日が再来週にやってくる。日本人の平均寿命は男性80・50歳、女性86・83歳(2014年、厚生労働省調べ)。約50年間で寿命は20年程度延びたと言われている。それはまた高齢化が進んだことも意味する。一方、八王子市の高齢化率(65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合)は24・62%(15年6月末時点)。今回は「敬老の日」を前に、高齢者を見守る取り組み、また若い世代を呼び込む活動を積極的に行っている市西南部の「長房」地域を取材した。
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「年をとるなんて夢にも思わなかったよ」。長房地域にある都営長房西アパート連合自治会の会長西山典明さん(74、長房町在住)は目を丸くした。西山さんは50年近くこの団地で暮らし、連合自治会長は2度目の経験。これまで市民センターづくり、バスの乗り入れ要望など地域コミュニティにかかわる様々な活動に携わってきた。「パワーがあったね」と若い頃を振り返る。
ゆるやかな見守り
そんな西山さんが高齢化について危機感を覚えたのは5年ほど前。民生委員の聞き取りから、団地内で孤独死をする高齢者が増えていると知ってからだ。
そこで13年、同連合自治会と長房西団地連合自治会が主催して、両連合自治会、市社会福祉協議会、市高齢者あんしん相談センター長房、市シルバー見守り相談室長房、児童民生協議会第12地区による都営長房西団地「支えあいネットワーク事業(ゆるやかな見守り活動)」をスタートさせた。
ネットワークでは各機関の連携により、高齢者の家族や地域社会からの孤立防止をひとつの目的とし、協力員が要援護者に対し「平常時の見守り」と「震災時の安否確認」を行う。今年度は協力員170人、要援護者444人で構成。協力員は、日常生活の中で「新聞がたまっている」「ゴミが出されていない」などの異変に気づいたら相談センターに報告。相談センターはその高齢者の親類などに連絡をとり適切な支援につなげる。
この活動の成果は顕著で、西山さんによると、ガラスを割って消防員が助けに入るなど実際「防いだ」ケースも何件かあったそう。社会福祉協議会では「このような取り組みは市内で長房が先駆的。平常時の見守り活動と専門機関が連携する点に特徴がある」と話した。
10年後のため種まき
なお、現在、都営長房西アパート連合自治会の加入世帯数は750。西山さんによると、役員のほとんどは65歳以上という。「なかなか体が動かないよ」と現状を憂いつつも、「10年、15年後は明るい」と前向き。若い世代との関わりが増えてきているからだ。
今年7月の納涼祭では「若い自治会員」を実行委員長に据えた。早速新しい取り組みとして「子ども太鼓」を実施。リアカーに90個の提灯を飾り山車にみたて、30人ほどの子どもが引っ張った。「今までにない発想」と西山さんは目を細める。子どもが参加することで、このようなイベントが3世代で楽しめるものになればと願う。
また、10月に行われる防災訓練には昨年から近隣の市立長房中学校(長房町)の生徒が参加。今年も100人ほどが一緒に防災について学ぶ。高齢化により団地の空室が目立つようになっても、そこに「若い人」が入居してくれれば問題は小さいと西山さんは考える。積極的に若い世代と関わることで、現在、その種をまいている。
市の対策は
八王子市では高齢化対策について、「定住人口を維持する施策が必要。若者の就労の場の確保や子育てしやすい環境づくりに力を入れていきたい」としている。ある市議からは「今の3、40代が高齢化したときの対策を今から検討しておくことも重要」との意見もあった。
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