大和 コラム
公開日:2022.06.03
徒然想 連載291
花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は多くの財産、黄金、食物のある人が自分一人で美食を追求するなら、それは破滅への門である、です。
出典はインド、原始経典『スッタニパータ』。意は人を破滅させる悪徳を並べる一節の中の一つです。他の悪徳とは、例えば、怠けて寝てばかりいる、嘘をついて人をだます、財産や家柄をいたずらに誇って他人を軽蔑する、深酒やかけ事に溺れる等々で、なるほどと理解できます。
実はもう一つ「豊かに暮らしているのに、年老いた両親を養わない」ことも破滅への門として挙げられます。
家族間の人間関係が背景にあります。インドの家庭は昔から大家族が多く、一つの家に兄弟や従兄弟等の家族が共に暮らしました。それだけに人間関係には非常に気を遣います。それぞれの立場に応じた敬意を払う。同時に全員が他の家族の立場と心情を思いやる深い愛情も大事で、敬意と愛情が一つに溶け合う生活でしたが、時代の流れとともに生活様式が急激に変わり、人間関係もまた大きく変わりました。
しかし、決して人を思いやる心を忘れることがないように心掛けたいものです。
桃蹊庵主 合掌
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