タウンニュース横須賀編集室では、2022年の年頭にあたり恒例の市長インタビューを行った。上地克明市長は新型コロナの感染拡大防止の協力要請に従ってくれた市民と事業者に感謝を述べるとともに、アフターコロナ・ウイズコロナ時代の地域活性の取り組みを話した。新年のスローガンに掲げた「新流」の言葉に込めた思いも語った。(聞き手は本紙編集長、安池裕之)
横須賀発展に強い覚悟
──2021年も新型コロナに翻弄された1年となりました。
「度重なる緊急事態宣言の発令で市民の皆様には、公共施設の利用制限などでご不便とご負担を生じさせてしまいましたが、ご理解、ご協力をいただき感謝を申し上げます。この間、医療や福祉などに従事するエッセンシャルワーカーの方たちが不眠不休で対応に当たってくれました。非常時に日夜、生命や治安を守ってくれている職業の人たちの存在をあらためて認識する機会でもありました。コロナの時間を過ごす中で私自身、もう一度原点に立ち戻り、市長として横須賀の発展に尽くす覚悟を決めました」
横須賀を動かす力に大河ドラマ/新ライブ拠点/マリノス練習場
──そうした中でも、新たな事業展開がありました。
「観光振興の中心に据えているルートミュージアム構想がようやく形になりました。昨年5月に拠点施設のティボディエ邸が完成。市内に点在する歴史遺産や自然豊かなスポットを『サテライト』に位置付け、ルートにしてつなげることで周遊を促す仕掛けです。現在は浦賀エリアの観光資源の掘り起こしに注力しており、浦賀ドックの見学ツアーや浦賀湾クルーズの実証実験を行っています。人や投資を呼び込んで浦賀の再生を図っていく考えです。もうひとつが、横須賀と北九州を結ぶ長距離フェリーの就航。三方を海で囲まれ、”陸の孤島”と呼ばれる横須賀ですが、国道357号(八景島─夏島町間)の延伸に加えて、2025年度までに圏央道の未開通エリアが整備され、横浜横須賀道路に接続されます。北関東、東北方面からのアクセスが飛躍的に向上することで、物流面で大きな変革が生まれます。これによりフェリーは首都圏と九州圏の輸送手段として、役割が増していきます。物流関係の需要増を予測しており、いかにして横須賀の経済循環に結び付けていくかを思案しています。福祉の分野では、赤ちゃんからお年寄りまで一気通貫で対応するために「民生局」を立ち上げました。行政の縦割り構造を見直し、狭間にあった人に救いの手を差し伸べるための改革です。民間の力も最大限取り入れ、あらゆる手段を講じて『誰もひとりにさせないまち』を実現していきます」
──DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みも進んでいます。
「行政のDX化は時代の要請ですが、窓口業務や事務作業の効率化、合理化を目指すことだけが目的ではありません。単純な仕事をAIやICTツールに任せて、職員は市民との対話に時間を割く。まちに出て市民ニーズの把握に努める。DXはこうした思想のもとで進めなければ意味がありません。生活困窮相談などの福祉相談窓口を日曜日にオープンしたのも行政の意識改革のひとつです」
──期待が高まる話題にNHKの大河ドラマ放送があります。鎌倉武士を題材にしたストーリーで、三浦一族にも脚光が当たりそうです。三浦一族研究会のあるメンバーは「百年に一度のチャンス」と興奮しています。
「時がきたのかもしれません。埋もれていた三浦一族の歴史に光が差し込むきっかけになることを期待しています。私自身は、三浦一族を”滅びの美学”として捉えています。武士としての意思を貫き通した部分が、どのような美的感覚で描かれていくのか楽しみです。まちおこしの観点では、世間の関心度合いをにらみながら、施策展開を考えたいと思います」
──街中で行う音楽ライブなど、エンタメ事業も再開し始めています。
「音楽やアートは心のビタミン。生活の潤いであるとともに、文化交流や地域活性に欠かせないものです。『街はどこでも小劇場』のフレーズをいつも述べていますが、街のいたるところで音楽が鳴っている状況を作りたいと思っています」
──うみかぜ公園にライブやイベントを行うことのできる拠点施設を誕生させるそうですね。
「民間の力を借りて開設できないかと思っています。チャンスがあれば、私も横須賀出身の腕利きプロミュージシャンをバックにステージに立つことを考えています」
──昨年末には、大矢部弾庫跡地を国から取得する方針が打ち出されました。東京ドーム4つ分という広大な敷地です。活用イメージを聞かせてください。
「公園化を含めてこれから調査を行います。散策や自然教育、エコ活動につながる利用形態が望ましいと思っています。住宅街に隣接した場であり、現時点では企業や商業施設を誘致する考えはありません」
──新港町のポートマーケットがリニューアルオープンします。
「コロナの影響で1年延期となりましたが、春以降のオープンに向けて準備を進めています。以前よりもスペースを拡大してレストラン部門などを強化すると聞いています」
──人口減少が止まりません。直近の数字では38万5千人を割り込んでいます。対策のひとつに、「テレワーク移住」があります。テレワークの浸透で通勤から解放された人たちが、首都圏に近い地方都市に目を向けています。チャンスではないでしょうか。
「テレワークに適した環境を整えるだけでは、移住・定住を呼び込むことは難しいでしょう。横須賀の人口減少は調べてみると、自然減が主な要因。安心して子どもを産み育てることのできる環境づくりが必要であり、来年度予算では、さらに子育て支援政策を充実させます。現役世代の移住促進にもつなげていきます」
──最後に今年のスローガンである「新流」について聞かせてください。
「ルートミュージアムの仕組みが完成し、フェリー航路も開通しました。今年は、横浜F・マリノスの練習場もオープンする予定です。これにより、新しいヒト・モノ・情報の流れが横須賀に変化をもたらします。変化を前進する力に変える、この発想が必要であり、変化こそが生きていること。そんな思いや願いを込めています」
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