横須賀・三浦 人物風土記
公開日:2026.03.27
自身が手掛けたラテアート作品の写真を飾った個展を開いている
峯尾 真実さん
横須賀市坂本町在住 44歳
「観客一人のためのアート」
○…汐入駅から池上に通じる坂道にたたずむスーパーの一角。創業90年、地域の台所を支えてきた店舗内のカフェスペースで、注いだコーヒーの泡の上に描く「ラテアート」で訪れる人たちの目を楽しませている。似顔絵からアニメや漫画の人気キャラクラクター、ペットなどの作品は5年間で約2千杯。選りすぐりの作品を写真にして飾る個展は2回目を数える。もはや趣味の域を凌駕しつつある。
○…店内にカフェを併設したのは、店舗を縮小した7年前。きっかけは、かつて店先にあったビールケースだった。年配者が買い物ついでに箱を逆さにして腰掛け、何気ない世間話に花を咲かせる居場所を残したいと考え、小さな社交場を設けた。「ビジネスとして継続させるには特色が必要」とラテアートを独学で始めSNSで作品を発信。これを見て遠方から駆け付ける人の姿も日常の光景となった。
○…かつては法律事務所でパラリーガルとして働いた経歴を持つが、22年前に嫁いでからは、この街の日常に溶け込んできた。スーパーでは、カフェの運営とともに惣菜づくりを担当。常連客には「足腰が痛くて駅まで行けない」という高齢者も多く、生活インフラとしての役割も担う。商売の形は数多あるが、「魅力ある場所に人は集まる」が持論だ。
○…カフェで先ごろ、印象深い出来事があった。愛犬を亡くし、深い悲しみに暮れる男性が店を訪れた。注文を受けてその愛犬の姿を描いた一杯を差し出すと、男性はしばらくの間、愛おしそうにその絵を見つめ、最後はうっすらと涙を浮かべて飲み干した。形に残らないからこそ、その瞬間の感情に寄り添える。「観客一人のためのアート。そんな可能性も秘めている」
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