新型コロナウイルス感染拡大に伴う飲食店の時短営業・休業による需要低迷と、好天続きで生育が良く出荷量が安定したことでの値崩れ。日本屈指の生産量を誇る三浦の大根は今シーズン、大量廃棄を余儀なくされた。苦境に立つ生産者を支援し、少しでも廃棄される大根を減らそうと、加工品づくりや販路の提供に乗り出す事業者が増えている。
廃棄野菜などを肥料に変える三浦バイオマスセンターによると、農家から持ち込まれた廃棄野菜は、昨年11〜12月の2カ月間で約1359トン(前年度同月約933トン)にも上るという。「搬入は大乗・毘沙門・宮川区の農家だけなので、市全体でみると氷山の一角では」と同施設担当者。「出荷をしても赤字になる」と見切りをつけ、例年より早くキャベツ栽培に移る生産者も多かったという。
ホテル特製のスープ
横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ(横浜市)は、先月20日から大根を使ったポタージュの販売を始めた。
レストランで出た食品残さを堆肥化し、その肥料で育った野菜を再び食材として使っている同ホテル。「愛情を注いで育てた大根を自らの手で廃棄しなければならない現状に、農家さんたちは大変心を痛めている。少しでも助けになれば」。今回使用する青首大根も協力農家の広瀬農園(横須賀市)と三浦市の三留農園・石井農園で収穫されたもので、生産者の窮状を知って開発された。
考案した洋食総料理長の磯貝徹さんは「米をつなぎにし、生姜を入れてほっこり温まるスープを作った。三浦の大根は瑞々しくて甘い。美味しい野菜の味や食品ロスの問題も伝えられたら」と話した。
1パック2食で税込540円。公式オンラインショップとホテル内各レストラン店頭で販売中。
以前から規格外や出荷調整によって行き場のなくなった大根の活用を模索していたのは、三崎の料理店「ミサキ イタリアーノ ボッカ」の安達悟さん。今季も大量の大根が廃棄されていることを受け、大根餅と呼ばれる点心を通じた消費拡大をめざして知恵を絞る。
一般的な調理法は大根おろしに、あみえびや片栗粉、調味料などを混ぜて成形し、油で焼くだけ。試食した常連客の評判も上々で、「三浦は日本一の大根の生産地。土産物として販売したり、観光客が焼きたてを食べられるようにしてはどうか」と提案する。
しかし、夫婦2人で店を切り盛りするなか、安定した製造販売まで手が回らないのが現状だといい、「福祉作業所でも作りやすいので、希望があればレシピを提供したい。作業所製品として福祉の役に立てたら嬉しい」
もったいないを解消
JR逗子駅前にある「モッテーネ・カフェ」では、高円坊の「スズカク農園」の大根を“もったいない野菜”として直売している。
昨年開店した同店のコンセプトは「地域のもったいないの解消」。形や色、大きさが規格を満たさず市場流通に出回らない野菜や果物を農家から買い取り、直売のほか、スープやジュースに加工して提供し、好評を得ている。
店主の阿部真美さんによると逗子駅前のほか、葉山町のカフェでも販売し、1日50本売れることも。それでも残ったものは、スタッフが手作業で切り干し大根を作り、レシピを添えて販売。食品ロスが出ないよう工夫を凝らす。
スズカク農園の鈴木彩子さんは「廃棄やカットでしか出荷できなかった野菜を救ってもらえてありがたい」と話した。
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