世界につながるスイーツ
オーナーの挑戦を支える事業承継

オーナーの栗山さん（左）と事業を引き継ぐ鈴木さん

　横須賀市安浦町の一角、うみかぜ公園に向かう通りに宝石箱のような佇まいのスイーツ店がある。ケーキデコレートで類い稀な技術を有する栗山莉沙さんが開いた「Ｌｉｓａ，ｓ（リサズ）　Ｃａｋｅ（ケーキ）　Ｍａｒｋｅｔ（マーケット）」（ＬＣＭ）だ。彼女はロンドン進出という大きなチャンスを掴み、近く日本を離れるという。10年以上かけて育てた人気店は地元企業、（株）ヤチヨの関連会社が事業承継し、看板を守る。栗山さんとヤチヨの鈴木孝博さんに今回の経緯を聞いた。

　──ＬＣＭはどんな店でしょう。

　栗山「英国でケーキづくりを学んだ私が10年前に開設した店舗です。旬や地産の素材を取り入れ、食の安全に気を配ったスイーツの販売とともにデコレーション技術を用いたウエディングケーキやカップケーキ、クッキーなどの製造を得意領域としています」

　──世界的ブランドやグローバル企業とのコラボ商品もたくさん手掛けていると聞きました。

　栗山「主にアイシングクッキーでクリスチャンディオール、ミュウミュウ、ダンヒル、グーグルなどから注文を受けています。ハンドメイドでクッキーの表面にデコレーションしていく技術はオンリーワンであると自負。これを横須賀の店舗で製造しています」

　鈴木「以前からその技術をＳＮＳなどで目にしており、ファンの一人でした。彼女から相談の連絡を受け、お会いしたのが１月。本人はパティシエとして渡英の夢を掴んだのですが、横須賀の店舗との両立が困難であるため悩んでいました。ＬＣＭのファンになってくれたお客様に加え、彼女の技術を慕って集まったスタッフもたくさんいますので、（店舗を）継続できる道はないかと考えあぐねていたのです」

　──相談したのが鈴木さんだったのですね。

　栗山「横須賀ではこの人しかいない、と思っていました。率直に思いを伝えたところ、私のチャレンジと店舗の継続を事業承継という形で実現する道を示してくれました」

　鈴木「世界的な企業とつながる技術が横須賀から消失してしまうことが残念でならなく、力になれないかと考えました。当社は外食店や物販店を全国で展開をしており、店舗運営のノウハウがあります。ただ、ケーキ製造に関しては未知の領域。遠隔でスタッフの技術指導と商品監修を行うことに加え、英国での活動で得た新たな知見をフィードバックすることを条件に店舗を引き継ぐことを伝えました。日本から世界に挑戦する有能な人材を応援したい。そんな気持ちも多分にあります。彼女が横須賀で築いたＬＣＭのブランドをしっかり守りながら、もっと大きく育てていきます」

　栗山「本当にありがとうございます。振り返った時に『ベストな選択だった』と思えるように頑張ります」

【ＤＡＴＡ】安浦町２の33の１／午前10時30分から午後７時／月曜（祝日営業）・火曜定休／【電話】０４６・８２１・５２３３