藤沢 文化
公開日:2026.04.01
絶やすな、手作り舞台の灯 藤沢市民オペラと市民会館【藤沢市民会館ありがとう】
藤沢市民会館の歴史を語る上で切っても切れないのが、「藤沢市民オペラ」の存在だろう。実力と華やかさを併せ持った歌手がソリストを務め、市民交響楽団が管弦楽を、市合唱連盟が合唱を担い、プロとアマチュアが手を取り合って作り上げる舞台だ。発起人は、藤原歌劇団などでタクトを振った故・福永陽一郎さん。市民らによるオペラ公演は今では各自治体で見られるが、いち早くこの仕組みを作り上げ、全国の先駆けとなったのは、市民会館開館5周年の記念事業として幕を上げた藤沢市民オペラだった。
「本格的な音楽ができるホールがほしいというのが悲願だった。東京や横浜に行かずとも、藤沢で本物のオペラが見られるようにしたかったのではないか」――。
そう当時を振り返るのは、1973年の第1回公演から藤沢市民交響楽団の一員として舞台に立ち続け、現在は同団のステージマネージャーを務める片岡哲さんだ。
多くの人にオペラを身近に感じてもらおうと、初演には親しみやすい演目と知られる『フィガロの結婚』が選ばれた。しかし、演奏側にとってはすべてが未知の世界だったという。公演で序曲を演奏することはあっても、全編を通してオペラを奏でる経験は皆無。「手探りの日々だった」と片岡さんは懐古する。
稽古中、オーケストラピット内で観客と垂直に座る奏者が思わず舞台の演技に目を奪われ、「横を向くな」と叱られたことも、今では懐かしい思い出だ。
開館10周年には、江の島の「五頭龍伝説」を題材にした創作オペラ『竜恋譜』を上演。地元ゆかりの歌手たちも参加するようになるなど、活動の裾野は広がっていった。
「福永さんは初めてをやりたがる人だった」と片岡さん。その情熱は83年に開館15周年記念の『ウィリアム・テル』の日本初演で結実。当時は初演のため国内に手配可能な貸衣装がなく、女声合唱の出演者らが稽古場にミシンを持ち込み、舞台衣装を手作りして本番に臨んだという。
今月15日の公演を最後に、市民オペラも一時幕を下ろした。片岡さんは「小屋がないからといって活動を止めてしまうと、再開には大きなエネルギーが必要になる。これはまたすぐ幕が上がるのが前提であり、火を絶やしてはいけない」と言葉に力を込める。
市民が手作りで守り抜いた芸術の灯。その輝きは、新会館での再始動の日を静かに待っている。
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