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藤沢 社会

公開日:2026.07.24

オトノバ 共に生きる即興演奏 音遊びが福祉の現場へ

  • 後藤さん(左)とひもを引っ張って風鈴を鳴らしたり=上=、若林さん(左)と逆さにしたウィンドチャイムの音を楽しんだりする利用者

    後藤さん(左)とひもを引っ張って風鈴を鳴らしたり=上=、若林さん(左)と逆さにしたウィンドチャイムの音を楽しんだりする利用者

 西富の藤沢市ふじさわ宿交流館で定期的に開かれている即興演奏ワークショップ「オトノバ」が、障害者福祉の現場へと広がりを見せている。2024年5月に多世代交流の居場所作りを目指して始まった音遊びが、意思の表出が困難な障害者の交流手段や社会参加の架け橋になっている。

 オトノバの主催者は、元県職員で鵠沼海岸に住む後藤勇さん。仕事の傍ら続けてきた好きな音楽を楽譜なしで、誰もが参加できる企画を立ち上げた。「もともと音楽は原始的で本能的な楽しみだった」と後藤さん。型にはまらない即興演奏では、偶然出た音すら表現の一部になる。互いの音に耳を澄まし、受け入れ合うプロセスには対等な関係が存在する。

 こうした取り組みに着目したのが、羽鳥の生活介護施設「PLAY WORKS リノア」(羽鳥)の支援員、若林明子さん。18歳以上の肢体不自由、または医療的ケアが必要な利用者をサポートする中で、専門スキルが求められがちな音楽のあり方に違和感を抱き、後藤さんに声をかけた。昨年5月から施設でもワークショップが始まった。

もたらす化学反応

 音のやり取りは、利用者の変化を引き出した。言葉による表現が限られる利用者が、自ら楽器を選んで音を鳴らし、支援員と応答を繰り返す。正しさを求めず音で交流する時は、利用者の秘められた思考や可能性に気づく機会になった。若林さんは「音のコミュニケーションは意思尊重の手段」と手応えを語る。

 活動の輪は大きくなり、利用者と後藤さんと若林さんを含む施設スタッフは来月、GALLERY 1045 平塚で開かれる「インクルーシブ展」への参加も決めた。それに向けたパート練習が17日にあった。

 打楽器や鍵盤ハーモニカだけではなく、ミュージックベルでタンバリンを叩き、防災用アルミシートをクシャクシャにし、手動洗濯機に入れたペットボトルのふたを回す。そうして生まれる奇想天外で複雑なアンサンブル。皆の表情はいきいきとしている。「波音も鳥のさえずりも不規則。でも心地良さを感じる。音楽とは何だろう」。後藤さんは首をかしげながらも感慨深げだ。

 年齢や障害、演奏技術の差を超え、決まったビートのない自由な共生の形が響いていた。

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