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「俳優・漁師」全うした94年 長谷の加藤茂雄さん逝く

文化

掲載号:2020年6月26日号

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2017年4月に本紙の取材に応じた加藤さん
2017年4月に本紙の取材に応じた加藤さん

 長谷に生まれ育ち、漁師でありながら「大部屋俳優」としても数々の映画やドラマに出演した加藤茂雄さんが6月14日午前7時、慢性腎不全のため自宅で亡くなった。94歳だった。通夜・告別式は近親者で行われ、喪主は長女・裕子さんが務めた。昨年6月には、初主演映画「浜の記憶」が上映されたばかりで、地元ではその死を悼む声が上がっている。

 1925年、江戸時代から続く市内の網元「長四郎網」の分家に生まれた加藤さん。20歳で旧陸軍に召集されるが、その15日後に終戦を迎えた。

 翌46年5月、光明寺に開校した「鎌倉アカデミア」に入学。演劇科の一期生として学んだ。

 在学中の48年に「春の目ざめ」で初舞台を踏み、卒業後は映画会社東宝に入社。大部屋俳優として、黒澤明監督の「七人の侍」、本多猪四郎監督の「ゴジラ」などで、様々な役柄を演じた。

 その後、テレビや舞台、声優など、幅広い分野で活躍。また役者をしながら漁にも出続けた。

93歳で初主演作

 大嶋拓監督(57)から「俳優生活70周年を記念して主演映画を作りたい」と持ちかけられ、昨年6月には自身初となる主演映画「浜の記憶」が完成。本紙の取材に「この歳で主演の話がくるなんて夢にも思わなかった」と語った。

 光明寺や新宿の映画館などで行われた上映に足を運び、観客に元気な姿を見せていた加藤さんだったが、昨年8月に体調不良を訴え、2週間ほど入院。その後は回復したと見られたが、今年3月から再入院し、医師から腎臓の働きが低下していると告げられていた。4月末に退院したが、5月上旬に危篤状態に。最後は自宅で息を引き取った。あと2日で95歳になるはずだった。

「真っすぐに生きた」

 加藤さんの訃報は、地元に衝撃を走らせた。

 生前、加藤さんが頻繁に訪れた長谷駅近くのコーヒー店「idobata」オーナーの野口克世さん(70)は「茂さんは日本映画の黄金期を支えた長谷のスター。苦労したからこそ話に重みがあった。役作りに徹底する姿勢を人生の先輩として尊敬する」と語った。

 3年前に加藤さんと絵本「茂さん―鎌倉長谷のむかしむかし」を制作した市中央図書館近代史資料室の平田恵美さんは「人間味があって奥深い人だった。言葉一つひとつに臨場感があって、俳優としての才能を感じた。もっと話をしておけばよかった」と嘆いた。

 大嶋監督は「現場では常に笑顔で周りに元気を与えてくれた。もう1本一緒に映画を作りたかった」と惜しんだ。

 長女・裕子さんは「幼い頃、父は日本各地を撮影に回っていてほとんど家にいなかった。漁にも出ていて忙しいはずなのにつらそうな顔を見た記憶がない。亡くなる前日も手足を動かして、何とか自力で立ち上がろうとしていた。復帰したかったんだろうけれど、好きなことに真っすぐに生きた人生は幸せだったと思う」とコメントした。

8月に追悼上映

 川喜多映画記念館で8月10日(月)〜16日(日)、加藤さんの追悼上映会を予定。「浜の記憶」「鎌倉アカデミア 青の時代」のほか、上映作品の詳細は今後発表するという。

 (問)同館【電話】0467・23・2500

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