二宮町教育長に4月1日付で就任した 和田 智司さん 小田原市在住 61歳
剣の道はやさしさに通ず
○…4月1日付で二宮町の教育長に就任した。昨年度からスタートした二宮独自の学校教育制度、施設分離型小中一貫校「にのみや学園」の教育目標「認め合い、高め合う、二宮の子」につながるソフト面の整備と、子どもから大人まで、二宮で暮らす人の社会教育の充実を目指す。「『工夫』がキーワード。ゆたかな発想で、よりよい環境のために運営していきたい」と意気込む。
○…「剣道とは、人間形成の道」と、小学3年生の時から始めた剣道を今も続けている。七段の腕前だが、「初段は6回、五段は8回落ちた」と明かす。「逃げたくない」と竹刀を握り直す心は今も。200人に1人しか受からないとされている八段に挑戦中で、「10回落ちている。でも諦めません」ときっぱり。「お昼休みに、素振りしているんです」とはにかむ。
○…小学6年生の時に父を亡くし、母子家庭で育った。明治大学農学部農学科出身。奨学金を活用しながら、授業料は自分でまかなった。「近所の子どもたちに勉強を教えるアルバイトをしていた。どうやったら理解してもらえるか考えていた」。素数を覚えるためのおもしろい語呂合わせを考えるなどの「工夫」を尽くすことが、子どもたちと学ぶ楽しさを教えてくれた。
○…15年間、理科の中学校教諭を務めたのち現場を離れ、教員研修として2年間、横浜国立大学大学院へ。息子の誕生や母の死を通じて見つけた「生命尊重」というテーマを教育現場でいかに伝えるか、研究した。「例えば解剖の授業では、始まる前後で子どもたちの命に対する反応がまるで違う。素直な気持ちに、こちらも学ぶことが多い」。やさしい眼差しには「剣の道」で得た、謙虚さがにじむ。