町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の62
偏見と差別
偏見や差別は人が元来持っている悲しい性質のようなもの。しかし、自分と明らかに違うものに対して、人は中身を知ることで払拭することのできる優れた能力も持ち合わせている。ただしこれはざっくりとした区別で、例えば犬猿の仲とされる犬と猿も小さい頃から一緒に育てば、互いの姿がどう違おうとも兄弟のようになるし、今は閉園してしまったが、伊豆の天城にあったイノシシ村には、大きな猪の背中にしがみついている猿がいた。
長い梅雨が明けて急に夏がやってきた。湿度の高い梅雨に加えて、コロナ禍で境内の行事がことごとく自粛となり、チャンスとばかりに雑草が勢いづく。人々が密を避けて粛々と参拝し、骨董市やお祭がなくなれば踏まれずに済むというわけだ。雑草が増えれば喜ぶのは虫たち。中でも近年増えているのがカメムシの仲間たち。カメムシと聞けばほとんどの人が「臭い」と連想する。これこそ偏見と差別。カメムシは1300種ほどいて、その中で臭いのは数種類だけ。中にはリンゴやコーヒーのような良い香りのもいるし、農作物の害虫を食べてくれるのもいる。匂いもなく、農作物にも害がない一切無害なやつもいる。一把一絡げはどうも腑に落ちない。臭いカメムシはとりあえず緑色のカメムシと茶色いキボシカメムシだけマークしておけば間違いない。それよりもヨコヅナサシガメの類は、怒ると刺すから気を付けた方がいいが、めったに家に侵入してくることはない。カラフルなセアカツノカメムシ=写真【1】、体調5ミリほどのムラサキシラボシカメムシ=同【2】、怒ると刺すヨコヅナサシガメ=同【3】、背中の模様から私的にハートカメムシと呼んでいるエサキモンキツノカメムシ=同【4】。どれも臭気は出さない。もっとも、臭い匂いを出すのも刺してくるのも危険を感じた時だけで、きっかけは人間をはじめとする外敵にあるということだ。やさしく手や紙などにたからせて解放してやれば臭い匂いを放つことはないし、攻撃してくることもない温厚な虫だ。しかもそれぞれのコスチュームもカラフルで面白い。
依然人種差別が払拭できないアメリカ。ウイグル族を弾圧する中国。かつてユダヤ民族に悲惨な歴史を刻んだドイツ。日本も在日外国人に対して少なからず差別をしてきたことは否めない愚かな事実。世界にはまだまだ偏見と差別がたくさん見られる。そしてあろうことか、コロナ感染者に対するバッシング。夜の街やらライブハウスやら、自主的に休業している店や対策にしっかり取り組んでいる店までひっくるめて、リスクの高い良くない場所と決めつけてしまう風潮。医療機関に勤務する人の子どもの登園拒否を要求するうわべだけのママ友。まさにコロナ差別。我が身かわいさをグッと我慢して、応援する側に立てないか。同じ人間で、同じ日本人で、こんなにみんなが心細い時に差別なんてしている場合じゃない。コロナが終息した後に残るものは人種差別やいじめと変わらない。差別した者は一生後ろめたく、された者は一生忘れない。ちゃんと知ることは多くを救う。ほとんどのカメムシは臭くない。ほとんどの人たちは頑張っている。
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宮司の徒然 其の137町田天満宮 宮司 池田泉12月21日 |
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宮司の徒然 其の135町田天満宮 宮司 池田泉11月30日 |