町田産ブドウでワインをつくるプロジェクトを始めた 渡辺 文久さん 玉川学園在住 54歳
相手の期待を超えるものを
○…「町田産のブドウでワインをつくる」。まだ誰もやっていない壮大な計画を実行に移した。目的はワインをつくって利益を得ることではなく、ゴールまでの過程にある。「長野や山梨に行かなくても、地元でワインづくりが楽しめたら」と、賛同者を募って体験型のプロジェクトを企画した。収穫までは早くても4、5年。だが、たとえ実がならなかったとしても仲間たちと挑戦することに意義がある。
○…小さいころはやんちゃでけんかもした。5歳のときに大きな交通事故に合い、1週間意識が戻らなかった。目が覚めると、医者も驚くほどの回復力でその日のうちに退院。「周囲の大人たちが奇跡と言っていたのを覚えています」。12歳で家族と町田へ移り、南大谷中ではサッカー部と野球部で汗を流した。
○…国士舘大学を卒業し、就職した先は大手証券会社のSMBC日興証券。顧客向けに開くセミナーにソムリエの田崎真也氏を招いたことがワインに触れたきっかけだ。ワインそのものに興味はなかったが「ワインは人と人を結び、絆を生むアイテム」という田崎氏の言葉が心に刺さり、少しずつワインに惹かれていく。2018年、念願だった独立する夢を叶えるため退職して「町田ワイン」を開業した。
○…会社員時代、世界中を駆けまわり一流と呼ばれる人物から学んだことがある。それは「常に謙虚な気持ちを忘れず、相手の期待を超えるものを提供する姿勢」。ずっと欲しかった子どもは2歳になる。「育児にかかわれることが本当に嬉しい」。自分の子どもと同じように楽しみなブドウの樹の成長。畑で土にまみれ、同じ目的に向かって一緒に過ごす人々との時間は星付きレストランのワインよりも芳醇で贅沢なひとときだ。
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