終身雇用の仕組みが崩れつつあり、多くの企業で禁止されていた副業や兼業の解禁ムードが徐々に広がり始めていたここ数年。コロナがこの流れを一気に加速させている。
テレワークの浸透による時間的な余裕に加え、収入減や雇用不安といった経済的な理由も背景にありそうだが、自己実現や成長機会の場と考える人も少なくない。昨年5月、横須賀市役所の同僚職員3人で一般社団法人「KAKEHASHI」を昨立ち上げた松田こずえさんは、紛れもなく後者のケースだ。
専門学校を卒業後に入庁して15年のキャリア。窓口サービスを皮切りに、秘書課、選挙管理課などを経験。現在は創業・新産業支援課で起業を志す人たちに向き合っている。様々な部署を通じて、人脈と知識を蓄え、市民サービスの向上に努めてきたが、「公務員の壁」にぶち当たるケースが多々あった。「特定の事業者のサービスや個人の取り組みなどは応援しづらい」。
豊作で廃棄しなければならない野菜を大量に抱える農家に出会ったときのこと。「食品加工を提案し、販路開拓の手伝いを買って出たが、ボランティアの範疇では解決できない」。立場としての限界を強く感じ、同じ思いを共有する仲間と法人の設立に動いた。
現在、手掛けているのは規格外野菜を用いた無添加・無農薬「ピュレ」の製造販売のほか、「生け花おけいこ定期便」と題した高齢者向けサービス、専門技術に特化した人材派遣など新規ビジネスを矢継ぎ早に投入している。すべて目の前にある課題から発案したもので、市役所の仕事を通じて出会った人脈もフルに活用しながら活動領域を広げている。
本業にもプラスの効果
公務員の兼業・副業に、厳しい目が向けられていることを感じることもあるが、上司の「どんどん前に進め。庁内に新しい風を吹かせてくれ」の言葉に勇気をもらった。外野の声は「聞きながら、気にしない」のトレーニング中という。
本業へのプラスを実感する日々だ。「創業支援の相談に訪れる人の事業立ち上げの苦労話に共感。自分も経験していることでそれが手に取るようにわかる」。市役所職員の法人活動に意味があると信じている。「10年後のスタンダートになっていたらいい」
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