なんつッ亭大将 古谷一郎 【私の履歴書】 シリーズ 「我が人生の歩み」 第6回・熊本でついに衝撃の一杯に出会う
ラーメン修行の為に九州行きを決めた僕が、その事を友達に話すと、「何だ、逃げるのか?」とか「どうせすぐに帰って来るだろ?」とか「お前にラーメン屋なんか無理だ!」等々、散々な反応でした。そうなると、僕の中では、「何クソ、いまに見ていろよ!」という気持ちが強くなります。誰に言われた訳でもなく、生まれて初めて自分がやりたいと思った事ですから、今回ばかりは途中で投げ出す訳にはいかない。そう決意して秦野を後にしたのです。
軽自動車でしたし、行き先はザックリと九州と決めただけで特にアテがあった訳でもなく、急ぐ必要もないので、福岡に到着したのは秦野を出て三日目でした。早速、安いホテルを見つけ、チェックインして、ガイドブックに載っているラーメン屋さんを何軒か食べ歩きましたが、本場の豚骨ラーメンは最高に美味しいのだろうと勝手に思い込んでいた僕の期待は見事に崩れてしまいました。インスタントの豚骨ラーメンのようだったり、やたらと臭かったりと、僕の味覚には全く合いませんでした。「こんなものを勉強するためにわざわざ九州まで来てしまったのか?」ホテルのベッドの上で、何とも言えない気持ちになりました。
「どうも福岡はピンと来るものがない」そう思い、次は久留米に行く事にしました。ところが、久留米のラーメンは匂いが強烈で、福岡の比では無いのです。とてもじゃ無いけど、これは無理。初体験という事もあったのでしょうが、あまりの臭さに、僕は逃げるように久留米を後にしました。(久留米のラーメン屋さん、ごめんなさい)
続いて向かったのは、熊本です。豚骨ラーメンの本場の洗礼を受けて、やや意気消沈しかけていましたが、熊本には美味しい店、いや、というより、僕の舌に合っているお店が何軒かありましたので、熊本で修行させてもらうのもアリかなと思いました。ただ、もっと美味しいお店があるかも知れないので、さらに南に向かう事にしました。行き先は、鹿児島です。
熊本市内から鹿児島までは、これがなかなか遠いのです。当時は高速道路も片側一車線ずつしかなく、おまけにやたら長いトンネルがいくつもあるので、荷物満載の軽自動車では夜間走行も心細いので、途中の人吉という街に寄り、宿を探す事にしました。
人吉は温泉街で、格安の国民宿舎がいくつかありました。宿を決め、部屋でガイドブックを見ていると、近くに「好来」というラーメン屋さんがある事を知り、早速行く事にしました。店内には、メニューがなく、キョロキョロしていると、注文する前にラーメンが運ばれて来ました。どうやら、メニューはラーメンのみのようでした。丼から溢れんばかりのラーメンを一口啜ると、決して大袈裟ではなく、頭に雷がズドンと落ちて来たような感覚になりました。「美味いじゃん」。九州に来て初めて、本当に美味しいと思えるラーメンに出逢ったのです。更にこのお店は自家製麺だったので、ここで修行させてもらえたら、製麺も出来るようになるというのも魅力的でした。
好来に強く惹かれたものの、せっかくここまで来たのですし、もっと美味いお店があるかも知れないという事で、鹿児島に向かう事にしました。鹿児島にも美味しいお店はありましたが、やはり「好来」の事がどうしても頭から離れなかったのと、人吉という田舎町の雰囲気に惹かれて、再び人吉に戻る事にしました。秦野を出て、ちょうど10日経っていました。
さて、好来で修行させてもらうと決めたものの、それはこちらの勝手な都合であって、先方が承知してくれるかは別問題、というよりも全くの不明です。好来はご主人と奥さんでやっている小さなお店で従業員もいないようでしたから、そもそも、弟子を受け入れてくれるかも分からないのです。「もしも断られてしまったらどうしよう」それが問題でした。
故郷を後にして決心した道です。何が何でも後戻りは出来ません。とりあえずは住む場所を決めて、長期戦で挑む事にしました。定住して、足繁くお店に通い、交渉を続ければ何とかなるだろう、いや、必ず何とかしないといけません。という事で、先ずは不動産屋さんに行きました。
次の日、人吉市内のちょうど真ん中あたりに不動産屋さんを見つけました。店内に入り事情を説明してみるものの、なかなか信用してくれず、相手にもしてくれないのです。僕が必死に想いを伝えれば伝えるほど、スタッフの女性は困惑顔になってしまいます。
今考えると、軽自動車に荷物を満載にしたチンピラ風情がいきなり来て、物件を貸してくれと言っても警戒されてしまうのは当たり前ですよね。途方にくれていると、奥の部屋から社長の奥さんらしき女性が出て来て「話は聞いたわよ」と言って来たのです。
(次号に続く)
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田原ふるさと公園野菜直売研究所0463-84-1281/そば処東雲0463-84-1282 https://www.kankou-hadano.org/pointinformation/pointinformationguide/point_tawarafurusatokouen.html |
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