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横須賀・三浦 社会

公開日:2026.08.07

『花緑青(はなろくしょう)が明ける日に』上映会 銀幕に息づく思い出の風景 三浦市出身、四宮監督がトーク

  • 作品に込めた「三浦愛」を語る四宮監督

    作品に込めた「三浦愛」を語る四宮監督

 夕焼けの茜色に染まる三浦海岸海水浴場で潮風と波音が包み込む──。三浦市がモチーフの映画『花緑青が明ける日に』の上映会が8月1日に行われた。作品の上映に合わせて、原作・脚本・監督を務めた三浦市出身の四宮義俊監督(45)のトークイベントが開かれ、市内外から約350人が来場し、監督が抱く「三浦愛」や創作の原点に耳を傾けた。

 四宮監督はこれまで、日本画をベースに鮮やかな色彩表現で絵画作品や立体作品を制作してきた。近年は、『君の名は。』や『この世界の片隅に』など数々のヒット作品に携わってきた。初の監督作品となる今回の上映作は、2026年3月に全国公開され、話題を集めた。三浦市での上映は初めて。多くのファンが駆け付けた。

幼少期の原風景

 物語の中心となるのは、架空の都市「二浦市」で繰り広げられる若者3人の人間ドラマだ。豊かな自然と変わりゆく街の姿、そして幻の花火づくりに挑む若者たちの葛藤と絆を瑞々しく描いている。作品の原点となったのは、四宮監督が15歳まで過ごした三浦の地の変化だった。

 「自分にとっての原風景を振り返った時、一番初めに思い浮かんだのが三浦だった」と話した四宮監督。幼少期に刻み込まれた地元の空気感や風景が、作品に投影されているという。物語には、今回の上映会場である三浦海岸のほか三崎、小網代など、地元住民であれば思い当たる場所が随所に登場する。劇中の風景は、現在の実景のトレースにとどまらない。幼少期に感じた「過去の三浦」の姿や、すでに失われてしまった建物など、時とともに姿を変えてきた街の移り変わりが多層的に重なり合っている。

 「三浦の風景を作品の単なる背景や舞台設定ではなく、『あの風景があったからこそ人生が変わった』と思えるようなエモーショナルなものとして取り入れた」と語る四宮監督。過去・現在・未来の様々な三浦が重層的に折り重なっており、時を交錯した描写は、観客一人ひとりが抱く「心の原風景」と強く共鳴する仕掛けとなっている。

伝統継承への問いかけ

 四宮監督は、着想の背景として、20代の頃に自身が経験した2008年の三崎地区の花火大会の中断を挙げた。自身が青春期を過ごした地域で、長年親しまれてきた祭典が突然中止となった衝撃は、心に深い爪痕を残したという。当時の喪失感や悲しみが18年の時を経て、同作に注ぎ込まれた。

 物語は、臨海部の再開発によって失われていく自然や、社会の合理化に伴って直面する伝統継承の難しさなど、各地域が共通して抱える課題にも切り込んでいく。環境保護や経済効率の追求が進む一方で、「地域で受け継がれてきた伝統文化はどのようにして継承されていくべきか」という問いを、作品を通して投げかけている。

 同作は海外でも高い評価を受けている。国内の公開に先立って26年2月に「第76回ベルリン国際映画祭」のコンペティション部門に選出。同年6月には「アヌシー国際映画祭」のコントラシャン部門で審査員賞を受賞した。四宮監督は、「本作で描いたのは三浦だけの問題ではなく、世界中のコミュニティが直面している課題。そこに共感してもらえたのでは」と評価を受け止めた。

尽きない「三浦愛」

 トークショーの終盤、今後の展望を問われると「『自分にしか描けない風景』を描き続けること」と、創作意欲を力強く語った。「映画を観終わったあと、隣の人と『あの場面の場所はここだね』と語り合ってもらえたら、それだけで作った甲斐がある」と笑顔を見せた。

 「湿度の高い潮風に久々に触れた」とどこか懐かしそうに話した四宮監督。「溺れるような暑さ」と驚きながらも、夕暮れとともに吹き抜ける涼しい海風の心地良さを再確認する表情には、三浦への尽きない愛情がにじんでいた。

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