未だ全国で後を絶たない特殊詐欺被害。三崎警察署管内で昨年発生した被害件数は12月24日時点で６件、被害額は約７８０万円。一昨年同期比で２件減ったものの、１７０万円ほど増。年が明けた今も十分な注意が必要で、署員たちは「騙されないで」と市民に呼び掛けている。ではどう対策をすれば良いのか。平林貴志署長から近年多発する犯行の手口や被害を未然に防ぐ方法のほか、交通安全や空き巣被害などについて話を聞いた。

　――昨年発生した特殊詐欺の被害状況は。

　「市内で最も多かった手口が、オレオレ詐欺の４件でした。子どもや孫を名乗る男から電話が掛かってきて『既婚女性と親しくなって子どもができた。相手の旦那にバレて示談金が必要になった』『会社の重要書類を失くし、損害を与えたので補填しなければならない』『仕事がうまくいかなくなった。世話になった人から借りていた１００万円を返さないといけない』などの内容です。

　一昨年は０件。三方を海に囲まれた市内ではバス移動が多く、犯人にとっては逃げにくいと考えていましたが、実際に被害は増えています。

　また、架空請求詐欺も１件ありました。個人情報保護委員会を語る犯人から『携帯電話のゲーム料金29万円が未納』と言われ、被害者が振り込んでしまった後も『あなたのせいで90人がネットウイルスに感染した。50万円の被害が及んでいる』と要求がエスカレートしていくケースなどです。

　さらに融資保険詐欺も１件。『借金でお悩みの方を支援します』といったメールなどが届き、相手に連絡すると『電子マネーが必要。手数料として１３３万円が掛かります』といった流れです。

　特殊詐欺が疑われる通報は昨年88件ありました。ただ、これはあくまで電話やメールなどを受けた方が『おかしい』と思って署に問い合わせをした件数なので、実際にはもっと数は多いはず」

　――その他の詐欺被害はありましたか。

　「屋根のリフォーム業者を装った男が訪れ、『隣の家を工事している者です。今休憩中なので無料点検しましょうか』との名目で屋根に登り、その一部を壊して『壊れていますね』と危険をあおり、高額な代金を請求する悪質業者による被害も数件ありました」

　――詐欺被害を防ぐためのアドバイスを。

　「オレオレ詐欺などには、自動録音機能付き電話や留守番電話の設定が大きな効果を発揮します。犯人に対する抑止力になり、仮に被害にあったとしてもその音声が逮捕への手掛かりになります。また、怪しいメールは開いたり、返信したりせず、水際での対策を徹底してほしいです。

　そして、どんな場合でも知らない番号から電話でお金の話が出たら詐欺を疑ってください。『母さん、立って話しているの？疲れるから、ゆっくり座って』などと優しい気遣いで、警戒心を解こうとする犯人もいます。特に独り暮らしの高齢者などはその場で即決せず、まずは家族や友人に相談しましょう。それには普段から周りの人たちとコミュニケーションを取り、良好な関係づくりが鍵にもなります」

　――昨年の交通事故の件数と発生状況は。

　「交通事故の件数は、12月24日時点で１３１件（昨対比19件増）。負傷者１６２人（同32人増）、死亡２人（同１人増）。一昨年と比較すると、すべての項目で増加傾向となりました。

　なかでもオートバイが絡む交通事故は56件（同18件増）で、全体の42・７％を占めています。亡くなられたのは、スピードの出し過ぎでカーブを曲がり切れなかった、港の岸壁で横に張られたチェーンに気づかずに接触した、といういずれも市外から訪れた方でした。コロナ５類移行の影響もあり、昨年から市内は多くの人出でにぎわうようになった一方で、交通事故も増えています。

　また、ブレーキとアクセルの踏み間違えや横断歩道のない道路を渡るといった高齢者に関する交通事故も59件（同14件増）あり、全体の45％を占めています。

　65歳以上の運転免許保有率を見ると、県内18・８％に対し、三浦市内は32・９％（８４９１人）で、県内では相模原市の津久井署管内に次ぎ、２番目に高いというデータも（10月末時点）。高齢者だけが事故を起こす訳ではありませんが、時間に余裕を持ち、交通ルールやマナーを守って運転すれば事故は減ります。あとは思いやりや譲り合いの気持ちを持つのも大事。運転に少しでも不安があれば免許返納という手段もあります。言いづらいとは思いますが、痛ましい事故を起こさないために家族など周囲の方の見守りも大切です。

　――昨年は空き巣窃盗事件もありました。

　「ベトナム国籍グループによる犯行で、容疑者３人を逮捕しました。被害額は現金約55万円、高級腕時計など約２８００万円。犯人は三崎地区に住みながら、庭の手入れが行き届いていない空き家を調べるなど、用意周到に犯行に及びました。親が施設に入ったり、亡くなったりして、遠方に住む子どもが管理する空き家も増加傾向。現金や貴金属を家に放置しないでもらいたいです」

　――最後に市民へメッセージをお願いします。

　「我々署員はもちろん、市民の皆さんとともに安全安心なまちを築いていきたい。不安や異変を感じたら躊躇せず、署までご相談ください。すぐに駆け付けます」