福島第一原発事故にともなう電力不足から代替エネルギーへの関心が高まる中、横須賀市議会では市独自の電力供給システムの確立を求める声があがっている。会期中の第3回定例会本会議で山城保男氏と藤野英明氏(いずれも無会派)が一般質問に立ち、天然ガスによる発電を例に「電力の地産地消」について取り上げた。吉田雄人市長は、地域ごとのエネルギー確保は将来的な課題としつつも、財政負担などを理由に、「現状では現実的ではない」と述べた。
環境負荷小さい発電
山城氏は今月1日の本会議で、市が独自の発電所をもつことで停電のリスクを下げることができると主張。市の所有地にガス発電所を設置することや、発電事業者の誘致を提案した。
参考例としたのが、浦郷町にあるガスコンバインドサイクル発電所(東京ガス横須賀パワー)だ。ここでは、天然ガスを燃料とし、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式を採用。天然ガスは、石油や石炭よりもCO2の排出が少なく、環境への負荷も小さいとされている。山城氏は、こうした発電所を市内西地区に設置することで、「市民病院や近隣の住宅にも電力を供給でき、災害時にも通常の状態で病院が使用可能になる」とした。
これに対して吉田市長は、「将来的には地域ごとの電力を含めたエネルギーの確保は大きな課題になる」と述べ、原子力だけに依存しない多様な電力供給体制への移行にも触れた。
その一方で、市有地にガス発電所を設置することについては、「財政的な負担だけでなく、排出ガスや騒音の問題などもあり、現状では現実的ではない」と答弁。約50年前、久里浜に横須賀火力発電所が立地した際には、地域住民から”迷惑施設”と受け取られたことから、「市が積極的に誘致する対象ではない」とした。また、災害時の医療施設や避難施設での電力確保は、当面は自家発電の充実が必要になるとの認識を示した。
東京都は整備検討
一方、20日の本会議で藤野氏は、天然ガス発電のメリットや他都市の例をあげながら、こうした市長の答弁に否定的な見方で質問した。
東京都が都有地に、100万キロワット規模の天然ガス発電所を、第三セクターやPFI方式(民間の資金やノウハウを活用する方法)で整備を検討していることを踏まえ、民間活力を活用することで大きな財政負担は回避できると提案。「横須賀市自体が発電事業に参入すべき」とただした。また今夏、市議会議員有志で浦郷町の同発電所を視察したことから、「騒音は敷地の外にはほぼ漏れず、排出ガスも極めてクリーン」と主張し、地震や津波が発生した際も、危険性が無いことを強調した。
これに対して市長は、発電所は建築基準法上、一般的に工業専用地域に建築されていると述べた。同発電所と同規模の市有地は第一種中高層住居専用地域であることも理由に「市として発電事業への参入は難しい」との見解を繰り返した。
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