三浦の咄いろいろ みうら観光ボランティアガイド協会 田中健介
地域の歴史や文化、街並みを描いた文学作品などから、知られざる三浦の横顔に迫る連載コーナー「三浦の咄いろいろ」。今回は、正月特別編として、正月に関する言葉や風習などを紹介します。
神を迎えるための目印として、正月に「門松」をたてます。これは「神を招く木」なのです。また、神がこもる依代（よりしろ）として「さかき」（榊）があり、『万葉集』では「神樹」と書いて「サカキ」と読ませているそうです。古歌に「榊葉に木線（ゆら）しでかけて誰（た）が世にか 神のみ前（まえ）に祝（いわ）ひそめけん」があり、平安時代の頃から榊は「栄（さか）え木」として神殿のシンボルになったのでしょう。
正月の参拝は、神威によって世の中の安泰（あんたい）を祈ったのです。私達の希望を神に述べ、神意を伺い災厄を祓（はら）えば、その年は良い年となるのです。
神が鎮（しず）まり給う処（ところ）が「ミヤ」であり、「ヤシロ」なのです。「神社」の起源なのでしょう。
新年の「参拝」を「初詣（はつもうで）」と言い、多くの人が行かれると思います。
三浦市内の各地域にどのような神社があるのでしょう。各々の里に祭られている神社の数はどのくらいなのでしょう。
南下浦地区では10社、初声地区10社、三崎地区は17社の合わせて37個処に神社が祭られています。ただ、これ以外で「松輪」では、里毎に「稲荷社」が祭られていて、赤い鳥居が立っています。
「初詣」のとき、神前に至るとき、「鳥居」の下を通ります。神社の入口にあたる「鳥居」とは何でしょうか。地図上でも神社のマークに「鳥居」の形が記されています。「鳥居」の他に「鳥井、鶏居、華表」などと書かれているそうですが、『廣文庫』（名著普及会）の「とりゐ」の項目をみると、「神社ニヨリテ島木（しまぎ）、籰指（わくざし）、藁座（わらざ）等ノ差異アリトイヘドモ、当世皆通（つう）ジテ島木ノ鳥居ヲ立ツ、石ヲ以（もっ）テ是（こ）レヲ作ルモノハ後世ノ費ナリ」とあって、「鳥居ハ日ノ神天ノ石窟ニコモリ給ヒシ時、八百万神謀（やおよろずのかみはか）リテ出御（ぎょ）アラン事ヲ祈玉（いのりたま）ヒ、ツヒニ木ヲ石戸ノ前ニ建テ、鶏ヲ其ノ木ノ上ニ居ラシメテ鳴（な）カシム、所謂（いわゆる）此ノ木則（すなわ）チ鳥居ノ初也（はじめなり）、故（ゆえ）ニ鳥居ト云フ」とあって、さらに、「鳥ハ戸ナリ、戸ハ門ナリ、居ハ井ナリ、門ノ井ノ心ナリト云ヘリ」とあり、また「鳥居ハ陰陽交感ノ表也（ひょうなり）、左ノ柱ハ陽、右ノ柱ハ陰、木ヲ其ノ上ニ通スモノハ、是（こ）レ則（すなわ）チ陰陽交感ノ理也（りなり）、或（あるい）ハ鳥居ハ天の字ヲ表ス」とも書かれています。
因（ちな）みに、「海南神社」の鳥居は三浦半島で、最も古いもので、明和九（１７７２）年の銘が入っています。この明和九年二月、江戸で大火があり一万数千人の人が亡くなっています。そこで、十一月に「安永」という年号に変わりました。しかし、その当時の狂歌に、「年号は安く永くと変われども諸色高色（しょしきこうじき）今は明和九（めいわく）」とありました。「諸色」とは「いろいろなもの」の意で、「高色」は高い値段のことです。「安く永く」と年号は変わったが、今は「迷惑（めいわく）」と詠んでいるのでしょう。
今の「平成」がどう変わるのでしょうか。皆様も「初詣」のおりに、吾が国の平穏をも祈念して下さい。
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