自転車ロードレースの本場・フランスへと渡り、世界の強豪と肩を並べて活躍する若きレーサーがいる。面手(おもて)利輝。高砂小、高浜中出身の22歳。ロードレースの最高峰ツール・ド・フランス出場をめざす日本チーム「エキップアサダ エカーズ」の強化メンバーとして、4年前からフランスでの競技生活を送ってきた。この1月からは日本チームを離れ、フランス人ばかりで構成される地元チームへの移籍を決断。あえて厳しい環境に身を置く、その真意に迫った。
日の丸を背負い
昨シーズンは、U-23の日本代表チームのキャプテンを務め、日の丸を背負って各地のレースを走ってきた面手選手。9月に挑んだ最高レベルの世界選手権U-23では、ゴール手前10Kmから壮絶なポジション取りを制した。あいにく最終4・5Km地点で他選手の転倒に巻き込まれて落車するも、確かな手応えを感じている。「世界で戦えている。ここまでやってきたことは間違いない」
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「夢は、世界を舞台に戦えるプロレーサーになること。フランス行きは、選手として人として成長するために必要なことだと思うから、正直、楽しみしかありません」
きっぱりと言い切るその精悍な表情からは、「覚悟」という言葉では片づけられない、厳粛さが漂う。「今まで積み重ねてきたことが自信になっている。初めて世界のロードレースを経験したその日から、魔法がかかったかのように魅了されて、それは今も薄れていません」。才能も実力も十分。自転車の神様に愛され、2015年に最も成長を感じさせた若手レーサーとの呼び声も高い。
「速い自分」だけを描き
中学生のころ、いわゆるママチャリにまたがり、箱根や山梨などへ赴くことに夢中になった。「遠くへ行くほど、新しい領域へ足を踏み入れるようで、非日常を味わえた」。高校では自転車競技部で初めてロードレースを経験。楽しさだけでなく、苦しさも知る。
「とにかく速く走りたい」―。「強い自分」だけを思い描き、辻堂の自宅から朝比奈峠を越え、能見台の高校まで毎日、自転車で通学。三浦半島をみっちり1周走って帰宅する日々を3年間続けた。「勝つことしか考えていなかったので、全く苦になりませんでした」。その努力と思いの強さを裏づけるかのように、インターハイや国体で入賞を果たし、3年時には日本一の栄冠をつかみ取った。
立ちはだかる世界の壁
大学に進学してまもなく、転機が訪れる。日本代表として挑んだカナダでの国際大会で、想像より遥かに高いレベルの世界の選手を目の当たりにし、衝撃を受けた。レースの走り方、戦術、気迫すべてが日本の常識ではまるで通用しない―。「日本でのレースは何だったのか。まるでままごとに思えるくらい打ちのめされました」
帰国後は「ただの大学生」というギャップに苦悩した。「ここにいたら、世界に到達どころか、目指すこともできない。挑戦しないで後悔するより、本物を追い求めたい」。覚悟を固めて退学し、12年全日本選手権U-23では準優勝に輝き、フランス遠征という新たな道を切り開いた。
13年3月にはフランスで行われた「モントーバン・ラフランセーズ」でチームメートのサポートを受けて優勝。地元でもニュースになり、注目を集めた。「フランスでの優勝は本当に嬉しかったし、自信につながりました。ここに居ても良いんだって言われたような気がした」
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この秋冬は、辻堂で身体づくりに励んだ。「2月にスペイン合宿があるので、まずは自分の居場所を作りたい。その時の走りで立ち位置が決まるし、日本人の評価にもつながるので、最高のコンディションで臨みます」
世界で輝ける”種”を持ち、近い将来、必ずや大輪を咲かせる。そのことを誰よりも本人が一番信じている。
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