藤沢 文化
公開日:2026.05.29
日本スポーツウエルネス吹矢協会「SFE辻堂支部」 一矢に込める集中と情熱
的を見つめる鋭い視線、そして「フッ」と静寂を破る鋭い呼気――。辻堂市民センターの体育室には、心地良い緊張感の中でスポーツウェルネス吹矢に打ち込む人たちがいる。全国組織の一般社団法人日本スポーツウエルネス吹矢協会の傘下で、藤沢市内に14支部あるうちの一つ「SFE辻堂支部」の面々だ。年齢を重ねてもなお心身を研ぎ澄まし、新たな挑戦を続けている”いきいきシニア”の活動に迫った。
一矢に込める集中と情熱
スポーツウェルネス吹矢は、制限時間3分の間に5本の矢を放ち、合計点を競う。礼に始まり、両手で筒を真上に上げ、深呼吸しながらゆっくりと腕を下ろすといった一連の基本動作が厳格に定められており、これも審査の対象となる。短い一瞬に一気の呼気で一点を射貫くためには、極限の集中力が求められる。静かな空間で自らと向き合う精神統一の時間こそが、メンバーたちを引きつけて離さない。
体の変化
同支部の舵取りを担うのは、支部長の池田忠和さん(80・辻堂西海岸在住)。自身が吹矢に出合ったのは2012年、当時の公民館で開かれていた体験会がきっかけだった。現役時代は自動車の設計・開発という緻密な技術職に従事していた池田さんだが、「年中風邪を引いたり、扁桃腺を腫らしたりして仕事を休み、同僚に迷惑をかけたこともあった」と振り返る。定年後、「健康になりたい」という思いを抱いていた時に、「これならできそう」と魅力に取りつかれていった。
実際に競技を始めると、悩まされていた風邪を引かなくなるなど、体に変化が表れた。吹矢独特の呼吸法に秘密があった。吹矢では「腹式呼吸」と「胸式呼吸」の両方を駆使する。「普段の生活ではこれほど深く息を吸ったり吐いたりはしない。吹矢は基本動作で強制的に深呼吸をする。細胞が活性化するイメージ」と池田さん。吹矢仲間も、かつて肺を患い階段を上るのも一苦労だったが、見違えるほど元気になったという。
衰えぬ探求心
同支部は13年に発足。毎週水曜と日曜に活動し、現在14人が籍を置く。平均年齢は高いが、競技にかける情熱は若者に負けていない。
その筆頭が、最高齢88歳の飯星健正さん(辻堂西海岸在住)だ。吹矢を始めておよそ2年。茅ヶ崎市で来週開催される大会を前に、「やるからには優勝」と意気込む姿勢は周囲を圧倒する。
もう一人は、綱島重夫さん(81・辻堂在住)。シニア世代のオリンピックとも呼ばれる「ねんりんピック」に昨年出場した実力者だ。
「こういう上手な人が教えてくれるから、ありがたい」と飯星さん。綱島さんも「いつも熱心に練習するのを見ると、私も元気になる」と返す。ベテランも初心者も関係なく、互いにフラットに交流できる環境だ。
今後の展望について池田さんは「もう少し若い世代も含めて人数を増やし、競技人口を広げていきたい。そして皆さんで切磋琢磨していければ」と目を輝かせる。
忙しい現代社会を生きる若い世代にとっても、心身をコントロールし、集中力を養う吹矢の呼吸法や精神統一は、大いに役立つはずだ。
「まだ吹矢を知らない人に、まずは体験してみてほしい。やれば絶対に楽しいし、面白いと感じてもらえるはずだから」
健康維持の枠を超え、アスリートとしてしのぎを削り合うメンバーたち。奥の深い競技と向き合い、凛と立つその背中には、年齢を忘れさせるほどの美しさと尽きることのない情熱が満ちあふれていた。
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