藤沢 文化
公開日:2026.07.10
遠藤在住・小島隆さん 研究者の型破りなこけし 誰も見たことのない姿へ
伝統的な形にとらわれず、自由な発想で色鮮やかな「創作こけし」を作る人がいる。遠藤に住むこけし作家の小島隆さん(76)。もともとは大手化学研究所で40数年、液状樹脂の研究開発に捧げた「ケミカルのプロ」だった。退職後にこけしの世界へどっぷりと浸り、全日本こけしコンクールで文部科学大臣賞などを受賞。その背景には、研究者ならではのリサーチ力と飽くなき探求心があった。
旅行が趣味で、土産物屋にある素朴で温かみのあるこけしの魅力に取りつかれていった。20代前半から、旅先で目が合うと買うように。丸い頭に円筒形の胴体のいわゆる「伝統こけし」だけでなく、斬新なデザインが施された創作こけしも集めていった。その数は約200体。「もう集めるものがなくなった。世の中に何があって何がないのかが見えてきた。それなら新しいものを自分で作ろう」と思い立った。
30代後半から始めた創作活動は、本業の化学研究のようだった。回転させた素材に刃物を当てて削る工作機械「旋盤」の教室に通い、休日を費やして技術を習得した。産地や技法に縛られないこけし作りの道を選んだ小島さんは、既存の概念を次々と覆していく。
自宅に設けたアトリエには、自身で作った道具類が所狭しと並ぶ。近年ではデジタル端末でのデッサンに、生成AIを完成形のシミュレーションに活用するなど、先端技術と伝統工芸を融合。秋田の「曲げわっぱ」のスギをケヤキ木と組み合わせた立体的な着物や、茅葺屋根の天井や骨組みに使われる囲炉裏の煙に燻された「すす竹」を生かした作品など多彩だ。木くずを樹脂で固めた集成材をあえて斜めにカットし、不思議な模様を浮かび上がらせる実験的な試みも研究者ならでは。
「アイデアが枯渇することはない。芸術と芸術の狭間にこそ、新しいヒントがある。一つのことに没頭すると、ありきたりなものしか出なくなる」とこけし以外のアート鑑賞も欠かさない。
同じものは二度と作らない小島さん。現在作品は、海外の熱狂的なコレクターを魅了している。「時間を置いてこけしを見返すと、必ず欠点が見えてくる。それを乗り越えるために、誰も見たことのない次の姿へ」。自身と向かい続けていく。
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