昨年の県内振り込め詐欺認知件数は2604件。座間市内では44件(被害額約6155万円)。今年に至っては、3月末までにすでに市内で10件、被害額は1500万円を超えている。手口も年々複雑化しており、座間警察署担当者によると、「日々新しい手口が生まれるため、対応が追い付かない」状態だという。
ここでは、3月29日に市内で実際に起きた還付金詐欺被害を紹介する。「自分だったらどう対応するか」「両親だったら大丈夫だろうか」。思いを巡らせながら読んでほしい。
1回目の電話
午前9時50分頃、市内在住の70代女性(Aさん)の固定電話が鳴った。Aさんは夫と2人暮らしだが、当時夫は不在だった。相手は座間市役所の健康保険課の職員を名乗る男。「1月中の還付金が5400円発生しており、今日中に手続きしないと消失してしまう。手数料が210円かかるが、こちらで代行処理することもできる。どうするか」と言われた。具体的な金額の明示もあり、押しつけがましくもなかったので、「それならば」と代行処理を依頼した。
2回目の電話
その電話を切った直後、市内にある銀行の行員・イトウから電話が来た(最初の男とは別人だと思われる)。40〜50代くらいの太い声の男で、穏やかな口調だったという。「せっかくの還付金、受け取らないのはもったいない」「私たちで代行するから大丈夫」。Aさんは「手続きを怠ったのはこちらなのに親切だな」と感じた。銀行の口座番号やキャッシュカード、通帳の有無などを聞かれた。
トラブル
しかし、Aさんは普段カードを持ち歩いておらず、すぐには見つからなかった。家の中を探すため、イトウに「一度電話を切る」と伝えると、「切らずに受話器を床置きしたまま探しに行ってほしい」と言われた。Aさんは「待たせるのは申し訳ない」と断ったが、「待っているのも仕事だから」と押し切られた。待たせている罪悪感から、途中で「これ以上待たすのは申し訳ない」と切ったが、すぐにまたイトウは電話をかけてきた。加えて、Aさんの家族構成や同居人のことも次々に聞いてきた。答えないのも失礼だと思い答えると、イトウは熱心に耳を傾け、話を広げ、Aさんに「ご苦労されたんですね」「よく頑張られていますね」と労いの言葉をかけて会話を続けた。切っては鳴り、切っては鳴る電話に、Aさんが根負けして出る。そんなやり取りが午後2時頃まで休みなく繰り返された。トイレや昼食をとる時間を申し出ることができないほどで、Aさんは「のぼせたような」状態になったと振り返る。約4時間の間、応対したもの、応対せずに切れたものも含めて45〜50回は電話が鳴った。
発覚
結局、見つからなかった銀行カードの代わりとして、郵便局のキャッシュカードと通帳を来訪した別の銀行員に渡した。Aさんからカードなどを受け取った後、逃げるように走り去る男の姿にハッとし、すぐ郵便局に電話したが、ものの15分の間で50万円(1日の引き落とし限度額)が下ろされていた。
暗証番号を聞き出す巧妙なカラクリ
普段、銀行などの暗証番号を人に言うことは絶対ないAさんだが、まず「暗証番号を覚えていますか?」と聞かれたという。覚えていると答えると、「今から電話口に録音機をあてるので、それに向かって吹き込んでくれ」と言われた。すぐに「ピー」という電子音が流れたので、Aさんは考える間もなく慌てて番号を言ったという。ダイレクトに聞かれれば誰でも不審に思うが、「少しだけ目先を変えさせる」ことでAさんの隙を突いたと思われる。
「自分を責めないで」座間警察署の特殊詐欺に対応する担当者に聞く
相手はプロの詐欺集団です。親族や市役所に確認電話をさせないよう、また本人に考える余地を与えないよう、言葉巧みに電話を切らせないので、どうか被害にあってしまった自分やご家族を責めないでください。
犯人グループは声を録音されるのを嫌がります。「会話を録音する」というメッセージを流す迷惑電話防止機能付き機器を購入するなどの対策が有効ですが、シニアの方の中には「壊れてもないのに買い替えるのはもったいない」と考える方も多いようです。ぜひ、お子さんやお孫さんからのプレゼントとして贈ることをおすすめします。
警察に被害届を出さない方もおり、実際の被害件数はもっと多いと考えられます。次の被害を出さないためにも、皆様からの情報を待っています。
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