「第18回酒田市土門拳文化賞」を受賞した写真家 高橋 ぎいちさん 64歳
ありのままを写す
○…山梨県の芦川集落を2002年からおよそ9年間にわたり撮影した作品「芦川―高齢・過疎の集落で―文明社会における芦川住民の精神性」が最高賞となる「土門(ど もん けん)拳(ど もん けん)文化賞」を受賞した。山形県酒田市出身の世界的な写真家、土門拳さんを称え創設された賞で、156人から4000点以上の応募があり、その中で唯一の受賞となる。「嬉しさより驚きが大きかった。時間が経つにつれてじわじわと実感したよ」と、写真家として初めての賞を喜ぶ。
○…デザインの専門学校で写真を専攻し、広告会社へ就職したが仕事に満足できず22歳で座間市消防本部へ。火災原因の資料撮影や市民への講座などで写真を続けていた。本格的な写真家活動は退職後から。富士山を撮影するための通り道だった芦川には蔵や古い民具が残り「文明とは離れ、与えられた環境の中で先人の教えを守りつつ、たんたんと生活している人々の姿、精神」に感銘を受けた。9年にわたり毎週末通い続け、住民と交流も深めながら撮影した。昨年はその集大成として写真集を出版。「受け取り方は自由」とありのままの芦川を、それぞれの人生観で見て欲しいという。
○…相模原市で生まれ育ち、現在は妻と暮らす。初めてカメラを持ったのは小学生のとき。プラスチックカメラを義理の兄からプレゼントされた。紙に物が写ることに感動。若い頃は「写真やイラスト、文字を使ったグラフィックデザインに心を揺さぶれた」と商業広告に興味を持ったが、本質的に心に迫るものを撮りたい気持ちへと変化した。
○…地域の写真文化の向上を目指し、座間市では3つのフォトクラブで講師を務める。写真に興味を持つきっかけを作りたいという。自身は、行くと安心し離れられない芦川の撮影が、生涯のライフワークとなった。「事実を明確に写し、感じる写真」で”変わらない”芦川を追い続ける。
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