東地区文化センター「みんなの美術講座」の講師を務める画家 吉野 光治さん 70歳
努力と自分を信じる勇気
○…知人の依頼で東地区文化センターの絵画講師を務めて30年。教えてきた生徒は数えきれず、センターきっての名物先生だ。4月には2回にわたる講座で、美術品の鑑賞を楽しむコツをレクチャーする。物腰柔らかい語り口調で、笑顔はとても穏やか。たまにじっと黙り込み、「あー、うん。それはねぇ」とスローペース。過去に日本経済新聞社賞はじめ、様々な受賞経歴をもつも、決してひけらかさない。「生徒が自分の”したい”を見つけられるように」。専門は油絵。拠点は座間だが、市外にも教室をもつ。自宅に、弟と一緒に改装したアトリエと美術館「kura」をひっそりと構え、創作も精力的。
○…幼い頃は地面がキャンバス。運動は得意だが引っ込み思案だったため、絵に夢中になった。中高で美術部に所属し、日本大学芸術学部を卒業。一時はテレビアニメの製作スタジオに勤務するも夢を追い続け、28歳のとき画家としてデビュー。指導者との二束のわらじを履き、多いときには150人の生徒を抱えた。前衛的な抽象絵画が流行し、次から次へと絵が売れる時代。「売ると創る、別々の情熱がありました」
○…40歳を過ぎたあたりがターニングポイント。「新しいものより古いものを知りたい」と、感覚ではなく絵画理論に基づく作品を描きたくなった。先人に倣い技法や歴史を猛勉強。作風や教え方ががらりと変わった。「やりたいことを突き詰めた。画家の才能はアイディアに、努力と忍耐、自分を信じる勇気を足したもの」
○…パソコン、携帯は持っていない。部屋では重たく響く黒電話が鳴る。古いラジオや時計、陶器、家具は、まるで自然と集まってきたかのよう。「描くと教える、両輪あっての今」と、絵画仲間と毎月ドライブ旅行へ出かけ、生徒とカレーパティーを開くこともある。4人の兄弟とは「大大大の仲良し。何かあるたび集合するよ」。絵画と画家の魅力に、人が集まる。
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