故郷、能登の祭りで使う山車「袖キリコ」の絵付けに挑戦している 宮下 吉和さん ひばりが丘在住 42歳
生粋のお祭り男
○…1年に1度の特別な日「小木(おぎ)袖キリコ祭り」の夜空に、ゆらゆらと輝く巨大な山車(だし)「袖キリコ」。灯篭の光で輝きながら、色鮮やかなモチーフが街を練り歩く様は、大切な原風景だ。30年が経った今、280Km離れた座間で袖キリコの絵付けに挑戦している。「故郷の小木では高齢化と過疎化が進んでいる。少しでも祭りに華を添えて、恩返しがしたかった」。9月の開催に向け、週末になるとサニープレイス座間で絵付けに励む。
○…故郷の「小木」は、石川県能登半島南東部に位置し、イカ漁が盛んな港町。幼い頃から自然に囲まれ、山遊びや素潜りをして遊んだ。娯楽の少ない小さな町で、一番の楽しみは祭り。2日間だけは、町中が光と熱の渦に包まれた。地元を離れても、祭りの時だけは毎年欠かさず帰郷した。「2日間、声が出なくなるまで叫ぶ。燃え尽きて、へとへとになるんだけど、不思議と日ごろ溜まったものがリセットされるんです」
○…製薬会社の営業マンとして、20年近いキャリアをもつ。製薬会社を志したのも、きっかけは祭りだった。19歳の時、祭りで右手の親指の第1関節を失った。激しくぶつけ合う山車の間に指を挟まれるという、一瞬の出来事だった。「もう利き手が使えないかも、という時に、ドクターや看護師さんが熱心に手当てしてくれた」。今では不自由なく筆を手にとり、絵を描くこともできる。
○…今では、妻と9歳になる娘とともに故郷の祭りに参加している。8歳年下の妻は絵付けのパートナーでもある。「週末を絵付け作業にあてた分、平日にしわ寄せが行く。文句も言わずに付き合ってくれる妻には感謝しきれない」。娘も妻に似て芯の通った優しい子に育っている。そんな娘が、目を輝かせて祭りを見ていると、子ども時代の自分を思い出す。「自分が幼い頃に故郷の祭りで感じた興奮を、今の子どもたちにも伝えたい」。そんな思いを胸に、一筆に力を込める。
|
|
|
|
|
|