国立科学博物館の名誉研究員で、8月20日の教育講演会で講師を務める 馬場 悠男(ひさお)さん 入谷在住 69歳
地道な努力を続ける
○…「豊かな心を育む〜人類の進化の過程から見えてきたこと〜」をテーマとした講演会。人類の進化に関する研究に携わってきた知識をもとに、持論を展開する。二足歩行を始めた440万年前の猿人時代から原人、新人と進化を重ねることで、数多くの生物の中で人類だけが獲得した「相手を思いやる心」の尊さを説く。「人類進化の視点から、人間らしい心を解説したい」と話す。
〇…人類学の専門家。43歳から64歳まで国立科学博物館に勤務し、現在は同館の名誉研究員。今の道を選んだ原点は小学生の頃だった。「少年ケニヤ」などの漫画に刺激を受け、自然や科学に興味を持った。特に大きな契機が、ロンドン駐在の新聞記者が、国産車で欧州や中近東を巡り帰国するまでの連載をまとめた書籍「ロンドン―東京5万キロ」。そこに描かれた旅の風景、メソポタミアやエジプトの遺跡に憧れ、「自分もこのようなことをしたい」と胸に抱いた。
〇…1987年からインドネシアでジャワ原人の化石を調査研究してきた。そして1997年、ついに約80万年前の化石を見つけた。前期ジャワ原人の化石発掘は当時、世界でも2例目。しかし、報告を聞いた時はすぐ大喜びしなかった。「嬉しいけど、ここで騒いではいけない」。そんな思いが頭をよぎった。間違いないことが確認できて、じんわりと喜びが沸いた。現地の研究者や住民と信頼関係を築き、地道な調査を重ねて掴んだ結果に、「努力しても幸運が訪れるとは限らない。しかし努力をしなければ幸運はやってこない」ということを学んだ。
○…3人の子どもは自立し、今は奥さんとの2人暮らし。5人いるという孫が家に遊びにくると「大変ですよ」と嬉しそう。旅行とドライブも好きで、海外の舗装されていないラフな道をジープで走ったこともある。奥さんと旅行する機会も多く「ほとんど5大陸を制覇した」と笑う。
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