座間市消防署の認知症対策を中心となって進めている 板倉 弘一さん 緑ケ丘在勤 60歳
知ることで、心穏やかに
○…高齢化率が「超高齢化社会」の基準とする21%を超えている座間市。火災や救急の現場において高齢化に対応するため、消防職員を対象とした認知症サポーター養成講座を2年前から推進してきた。今では約80%の職員が受講し、今月上旬には消防団にも着手。時に隊員らと意見をぶつけ合うこともあったが、粘り強く理解を促してきた。「研修を受けたことで、救急出動で認知症と思われる人に対応した時に、(教わった通り)正面からゆっくり話すことができた」。そんな現場の声が励みになっている。
○…認知症対策に取り組むようになった契機は、2012年。介護施設対象の防火研修を開くなかで、「消防職員にも認知症についてもっと知ってほしい」という声が挙がったという。そこから一念発起して勉強し、養成講座の講師を務められる「キャラバンメイト」の資格を取得した。いま感じるのは、「知る」ことの大切さ。症状の特徴や原因を学ぶことで、患者に対応する時の心持ちが変化する。「少しでも、お互いが心穏やかに過ごせるようになれば」と願う。
○…住まいは大和市で、妻と義母の3人暮らし。「どちらかは消防士になって欲しい」と密かに願っていた2人の息子は、福島県で居酒屋を経営している。東日本大震災の発災直後、店にあった食料で炊き出しをしたという話を聞いて、「そんな社会奉仕もあるのか」と我が子の成長に胸打たれた。今も年数回は足を運び、子どもが作った料理と酒を堪能している。
○…3月に定年退職を迎える。最近は「これまでの消防人生で何を残せたのか」と想いを巡らせるそう。これからも、消防の仕事に携わっていければと考えている。認知症対策に加え、いま取り組んでいるのが精神疾患患者の救急対応の整備。「行政やNPOと連携して、研究を進めていきたい」――。定年後も、歩みを止めず、意欲的に取り組んでいく。
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