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八王子版 公開:2016年4月21日 エリアトップへ

梨生産者 住宅地と「共存」目指す 市やJAが支援

社会

公開:2016年4月21日

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 国内の人口減少が進むなか、「国立社会保障・人口問題研究所」の将来推計などで、2030年以降も人口が増え続けるとされる稲城市。宅地開発の余地が残されていることなどが理由とされるが、住宅地が増えることによって市の主幹産業である梨栽培への影響を危ぶむ声も挙がっている。

 江戸時代に、市の前身のひとつである長沼村の代官増岡平右衛門と川島佐治右衛門が、山城国(現在の京都府東南部)から梨の苗を持ち帰ったことが発祥と言い伝えられる稲城の梨。砂利層が支える稲城の土壌は、水はけが良く、梨栽培に適していたことなどから明治時代以降、市は梨の産地として発展してきた。

 都の13年度「農産物生産状況調査結果報告書」によると、市の日本梨収穫量は都内1位の953トン。2位の東村山市(241トン)の約4倍に及ぶ。「この地でしか採れない『稲城』という品種が名物となり売上が安定していることが、稲城の生産者の生活を支えている」と、市の梨生産者で構成される「稲城の梨生産組合」組合長の石田洋一さん(72・東長沼在住)は話している。

梨畑と宅地が混在

 一方で、都と神奈川県を結ぶ「ベッドタウン」として街が人口を伸ばしてくると、梨畑と宅地が混在するように。1990年代半ばにもなると、住民から「梨栽培で使用する薬剤が自宅に飛んでくるのではないか」との声が聞こえてくるようになった。そのため、梨の生産者らは住宅地への影響を考慮し、害虫駆除などを目的とした大規模な薬剤散布を控え始めた。「この頃から、畑と宅地の共存方法を考える必要が出てきた。生産者仲間や農協、市と対策を話し合うようになった」と石田さんは振り返る。

薬剤散布を工夫

 梨生産者らは「共存」するための勉強会を開くなど対策を講じ、従来、専用車両によって薬剤を散布していたものを、広く飛び散ることのないスプリンクラー形式にしたり、通行人や車両などに散布しないように防薬シャッターを設置するなどの対策を市や「JA東京みなみ」らと進めてきた。

 今では、ほとんどの生産者が「明日散布」「散布中」などののぼり旗を掲げ、近隣住民に薬剤散布の時期を知らせている。「地域の皆様に迷惑がかからないように努めている。通勤・通学や洗濯を干す時間帯を避けて薬剤散布を行うようになった」と石田さん。

 横浜市で稲城同様に、梨栽培と住宅地の「共存」に取り組む、「浜なし」農家の落合清治さんは「うちの農園でも、薬剤が飛ばないように園の周囲を細かい網で囲んでいる。今後も宅地が増えてくれば、新たな対策が必要となってくると思う」と話している。稲城の梨生産者には、一緒に関東の梨を盛り上げていきたい思いをもっているという。

梨畑がアパートに

 新たな課題も出てきた。人口動向の研究にあたる「国立社会保障・人口問題研究所」が将来推計を表したデータには、市の人口が2030年以降も伸び続けるという予測がされている。宅地開発の余地が残されていることなどが理由のようだが、一方で、梨生産者は減り続けている。10年に108人だった梨農家は、15年には95人まで減少。市内で区画整理が進むなか、梨畑がアパートやマンションに姿を変えるケースが見られるようになるなど、宅地が増え、梨の耕作面積が減り続けているのだ。「相続税を払うために、梨畑を売却することが多いようだ」と市内梨生産者のひとり。

 JAの担当者は「通常1、2回しか行わない花粉付けを5、6回行うなど、稲城の農家さんは一生懸命梨を育てている。今後もその苦労を支援していきたい」と力を込める。

 石田さんは「先人たちが築いてきたブランドをみんなで守り続けていきたい」と話している。
 

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