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八王子で染められる反物 藍染の浴衣に 全国百貨店へ
野口染物店
中野上町にある野口染物店は200年以上続く「染め屋さん」。6代目の野口汎(ひろし)さん(82)と長男の和彦さん(44)親子が営んでいる。汎さんが「染め」を、和彦さんがその前段の「型付け」を担当。全て2人による手作業で「藍染の反物」を作り上げる。その仕事ぶりを見学に5月中旬、(株)荒井呉服店(八日町)の荒井哉子(かなこ)社長が制作現場を訪ねた。
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秋川街道に面した平屋の工房。離れとの間には中庭が広がる。長閑な「昭和」の香りが漂っている。
作業はまず、和彦さんによる「型付け」から始まる。長さおよそ三間半(6m50cm)の1枚板に生地を密着させ、模様となる型紙の上から防染糊を置いていく。
その糊が大事という。もち米、ぬかなどを配合して作られる。「手に合う糊ができるまで、なかなか大変で」(和彦さん)。反物の模様は一般的に片面だが、野口さんは両面つける。裏にも同じ模様が施され、「粋な反物」となる。
両面の乾燥が終わったら、大豆の搾り汁につける(豆入れ(ごいれ))。ここからが汎さんの仕事だ。作業場は離れから母屋に移る。豆入れの後、反物は一週間ほど寝かされる。
工房には藍甕(あいがめ)が並ぶ。それぞれその時々の状態で使い分けているそうだが、その見分け方は「せがれにも教えないよ」(汎さん)
甕に反物を入れ「捌(さば)く」。そして「風を切る」。空気に触れると酸化し、草色から藍色へと変わっていく。糊を置いた部分は染まらない。乾燥させ、水につけ手製の刷毛(はけ)で糊を落していく。中庭に干し、乾けば完成。汎さんは60年以上、この作業を続けている。「うちはいい加減。いい塩梅でやっているよ。これしかできないからね」
「奥行違う」長板中形
野口さんが作る反物は「長板中形」と呼ばれる浴衣になる。型付けを表裏両面行うのが大きな特徴で、寸分違わず合わせることは高度な技術が求められるそう。明治後期まで浴衣染めの主流だったが今ではとても稀少なものという。野口さんの反物は、日本橋の高級メーカー「竺仙(ちくぜん)」を通じて全国の百貨店などに卸されている。荒井社長は「一つひとつの作業が品物(の良さ)に表れています。奥行が違いますね」と称賛した。
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荒井呉服店でも竺仙の商品を取り扱っており、その中で「野口さんの仕事」を知るようになった。6月にある「ゆかたお誂(あつら)え会」で野口さんを特集することから、今回の訪問にいたった。
野口さんの反物
荒井呉服店でも6月2日から10日 お誂え会仕立て代無料に
大正元年創業の老舗「荒井呉服店」(八日町)では6月2日(土)から10日(日)まで、恒例の「ゆかたお誂え会」を開催する。期間中は税込2万5000円以上の反物を購入した人は仕立て代が無料となる。
今年は東京の老舗「竺仙」「三勝」をはじめ、京都「紫織庵」や「撫松庵」など注染・長板中形・絞りといった伝統染色技法によるものや、地元「野口染物店」の藍染反物を紹介する。「自分の寸法に合わせたゆかたをお召し頂きたい」と同店。詳細は【電話】042・625・5291へ。
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