堀之内エリアで90年以上に渡り、観賞魚の生産・販売などを行っている吉田観賞魚販売株式会社(松木/吉田俊一代表取締役)。同社三代目の俊一さん(57)は「電車や道路が整備され、便利になった。それにしても大きく変わったね」と現在の堀之内エリアを見る。
俊一さんが小学校低学年の頃の同エリアは、田んぼばかり。会社に近い大栗川で友だちとザリガニ釣りやイカダづくりなどを楽しんでいた思い出が残っているという。「高い建物がなかったので、会社のお客さんに場所の説明をしなくても良かったんだよ。今の南大沢地区ぐらいまで見渡せたかな」
街が驚くほど変化
その状況が一変したのが1980年代の中ごろ。ニュータウン開発が本格的に進み始め、工事車両が多く走り回るために砂埃が舞う日々が続いたという。「毎日、街の景色が”気持ちが悪いほど”変わっていった。蝉が鳴かない年もあったね。急速に開発が進み、蝉が住んでいた森が無くなってしまったんだろうね」と当時を振り返る。「生まれ変わった」街には、幼い子どもをもつ当時30、40代の家族が多く転入してきた。しかし、その家族らと地元の人間が交流する場が多くなかったことなどから、同じ街に住んでいても「顔見知り」が増えることは少なかったという。
2月 交流イベントでつながり
「街の活気を生むには人の交流が必要」と考え、新旧住民がつながる場づくりを模索していた俊一さんに転機が訪れたのは2014年。堀之内エリアの前身である由木村が八王子市に合併してから50年になるこの年に、記念イベントの開催を企画。”転入組”が多く所属するNPO団体らと組んで、15年2月、大栗川でキャンドルイベントを開催した。当日は1万人を超える家族連れなどが集まった。「この企画では、地域の多くの方と知り合えたことが一番の収穫。今後は定期的に住民が交流できる場をつくり、『うちの街は面白い』と住んでいる方が誇りに思えるような街にみんなの力でしていきたいね」