八王子中学校・高等学校(台町)を運営する、今年創立90周年を迎えた学校法人八王子学園の理事長に昨年就任。自校の生徒を「伸び伸びとしていて、しっかりと挨拶できる子たち」と評し、朝、登校してくる生徒たちの笑顔を見るのが何よりも楽しみ、と話す。
「直接の指導は先生方にお任せし、私の仕事は先生たちを励まし応援することです」。”裏方”に徹し、学校全体を見守っている。
異例の道を選択
異例の道を歩んできた。
八王子市内中学校の理科の先生として、「教育者」をスタートさせたが、30代半ばに国が取り組んでいた、海外の日本人学校へ教師を派遣する事業に手をあげ、ジャカルタへ。背景には、当時、高度経済成長期を迎えていた日本に国際化の波が押し寄せていることを肌で感じたことがある。「帰国子女の生徒が話す英語を十分に理解することができなかったんです。いずれこのようなケースが増えていくと考え、対応するためには、新たな学びが必要と考えました」
望んだ通り、ジャカルタでの学びは多かった。印象に残っているのが海外で働く日本の企業人の姿。「こんな遠くまで来て、日本を支えてくれているのか」――。教師といえども、経済の動きを把握するなど、より社会性を身につけなければと実感。国際性、社会を見渡す目、現在の「広い視野」はこの地での経験が基にある。
「引く手あまた」に
ジャカルタから帰国後も、いち教師の枠にはとどまらなかった。教育委員会勤務を始め、都内中学校や海外日本人学校の校長職を歴任し、60歳の定年後は、大手商社で、海外に赴任する社員の家族へ外国の生活に対応するためのアドバイスを送る要職に就くなど、「海外に精通している」として、企業から「引く手あまた」な存在に。
そんななか、縁あって現在務める学校法人へ。「様々なところからお声をかけて頂き、多くを学ぶことができた。視野が広がりましたね」
「自己最高」引出す
現在、直面しているのが、少子化という問題。子どもの数が減っているなか、どのように学校の魅力を高め、多くの生徒に来てもらえるようにするか――。そのためには、勉強もスポーツでも、在校中に生徒が「自己最高」を出せる学校にすることが大切、とする。それが、口コミで広がれば、地域から信頼を得ることにもつながるとも。「主体的に考える力を育むゼミなど、多岐に学べるプログラムを増やしているところです」
「無二のものができる」点が楽しいと、陶芸を趣味とする79歳。尽きない探究心を原動力に自身と同じ、「求められる人材」輩出に力を注ぐ。