都立八王子盲学校(台町)のグラウンドを練習場とするブラインドサッカーチーム「たまハッサーズ」(黒田智成代表=36)が7月11・12日、調布市で開かれた日本選手権で準優勝に輝いた。2005年のチーム創設以来、孤立しがちな視覚障害者の生きがいや仲間づくりの場としての役割も果たしている。黒田代表は「このスポーツのおかげで自分も世界が広がった」と話した。
台町で練習
「シャカシャカ」。毎週日曜日の午後、八王子盲学校のグラウンドに鳴り響く、ブラインドサッカー専用ボールの音。「ボイ、ボイ」(スペイン語で『行く』)と衝突を避けるために、ボールをもった相手に向かっていく時にかけなければならない専門用語がこだまする。アイマスクを着用したメンバーが必死にボールを追う「たまハッサーズ」の練習風景。
10年前のチーム創設から同校で練習を重ねてきた同チームは現在、八王子市民を中心に、16歳から65歳の視覚障害者らで活動している。13チームが参加した7月の「ブラインドサッカー日本選手権」ではPK戦の末、準優勝。過去13回開かれた同大会で、優勝3回の実績を残してきた。「試合内容は良かったが、負けたのは悔しい。次は勝ちたい」と黒田さんは大会を振り返る。
声掛けずともパスを受けられる
「自由にピッチを走り回れることが何よりうれしいんです」。黒田さんはブラインドサッカーの魅力をこう語る。02年に横浜で開かれた講習会に参加して以来、虜となった。小児がんにより6歳で失明する前に読んだ当時の人気サッカー漫画の影響で「自分もサッカーをやりたい」と思っていたことが参加のきっかけだった。
卒業後もプレーを続けようと、04年に教員として就いた八王子盲学校で「たまハッサーズ」を結成し学校内外からメンバーを募った。「楽しんでサッカーをしていたら人が人を呼び、気づくと多くの仲間が集まってきた」。練習を重ねていくと、年齢や仕事が異なってもメンバー間で気持ちが分かり合えるようになってくることに気づいたという。「普段から同じイメージを共有していれば、声を掛け合わずとも、仲間からのパスを受けることができるんです」
自分が「楽しみたい」と立ち上げたチームだったが、今では、地域の視覚障害者がスポーツを楽しめる場としての役割も課せられていると黒田さんは感じている。
また、練習場の確保など、チーム運営に関わる活動によって、障害があるなしに関わらず多くの人との出会いに恵まれた自身の経験を広く伝えていきたいとも考えている。「このスポーツによって自分の世界が広がった。このことをひきこもりがちになる視覚障害者に伝えていきたい」と話している。
来年のリオパラリンピックの日本代表候補選手に選ばれている黒田さん。9月にはその出場切符を掛けたアジア予選が始まる。「自分が活躍することが視覚障害がある子どもたちの目標のひとつになると思う。必ず出場したい」
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