新たな八王子土産を目指した「桑都(そうと)てぬぐい」が話題を集めている。国産100%の綿生地に、高尾山などの模様をデザイン。染色は市内で行う。企画した泉町の外構工事業(有)パル企画社長の小嶋聡さん(53)は「町おこしにつながれば」と期待を込める。
かつて織物の都
「桑都」は八王子の美称。かつて八王子が織物の町として栄えていた頃、桑を食べるカイコから絹をとったことから「桑」の「都」とされた。
小嶋さんは八王子生まれの八王子育ちで、地元の人とかかわることが多いが、「織物が盛んだったことを知らない人も多い」と話す。そのような実感もあり、今回の企画ではてぬぐいを通じて、織物から派生した染色という八王子の伝統文化を紹介しつつ、制作に地元や近隣のデザイナーを採用し、「見た目の良さ」も追及した商品を販売することで、町おこしにつなげたい考え。地域の産業発展に貢献しながら、全国に八王子の素晴らしさを知ってもらうことを目的としている。
高尾山などデザイン
小嶋さんは過去に海外の友人に日本の土産をわたそうとしたとき「大人数に配れて、持っていく際にかさばらないもの」という視点からてぬぐいをプレゼントしたことがあるそう。するとデザインの良さに「プリティ」などと大いに喜ばれたという。その経験が今回の取り組みの原点となっている。「八王子はプロダクツ(物)としてのお土産があまり見当たらない。町を代表できるようなものになれば」
てぬぐいのデザインは現在11パターンあり、八王子らしさを感じさせるイチョウや高尾山の天狗などが図柄になっている。てぬぐいを通じて八王子を知ってほしいという思いを込めて、商品にはそれら地元デザインに対する説明書きも添えている。
販売している場所は八王子を中心とした多摩エリアの小売店や飲食店など20〜30店舗。小嶋さんは「てぬぐいは、何かを包んだり、敷物にしたり、壁に飾ったりと応用が利く。価格も手ごろで買いやすいのも魅力」と売り込む。価格は税抜1200円。サイズは30センチ×90センチ。今年の5月から発売している。
八王子の染物の今
桑都てぬぐいの製造をしている染色工場のひとつで元本郷町にある扶桑染工(株)の加藤信社長(67)は「小学生の頃は織物が盛んで、家から学校までの間だけでもその関係の工場が4軒ほどあった」と話す。加藤さんも19歳の頃から実家の工場で働き始めた。その頃はネクタイの仕事が多かったという。日本の繊維産業は「70年代中頃まで右肩上がりだった」と振り返る。
「ネクタイは実用品だから、まさか減るとは思っていなかった」。2000年くらいから服飾メーカーなどが工場を海外へ移すように。そして徐々に海外の工場の技術力も高くなっていったために仕事はさらに減少。また、クールビズも大きく影響した。「ここ10年くらいはとくに悪い」。最近の依頼は、海外工場ではこなせない、手のかかる仕事がほとんど。加藤さんは、細部にこだわったネクタイを自社で企画するなど、新たな活路を見出そうとしている。
桑都てぬぐいに関しては「いい試み。昔は工場でてぬぐいも手掛けていたから懐かしい感じがする」と話した。
なお、八王子商工会議所の繊維・ファッション部会に所属する市内の染色・捺染の企業は現在5社となっている。
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