「サイレンが聞こえずに逃げ遅れた」「避難場所で案内が流れているのに気が付かず、もらうべきものをもらえなかった」。災害時における聴覚障害者の体験談。市内在住で同じ障害(難聴)を持つ女性から話を聞いた。上記のような状況の際の対策として八王子市では、「メールやSNSで防災情報の発信」「避難所の防災倉庫に筆談に使えるメッセージボードの用意」などをしている。しかし、非常時に直面し、抱えた障害を周囲に伝えられないために危機に陥る人もいる。「『助けて』となかなか言えない。そういう人がいることも知ってもらいたい」と女性は切実に訴えった。*取材には要約筆記者が同行
女性は20代後半から聴力が下がっていった。原因は不明。現在、話はできるが、聞くことは難しい。「言葉を聞くのが大変なので家に引きこもりがち。電話はできません」。相手の会話に応えられず、「無視をしている」と誤解されることもある。
高い死亡率
聴覚障害者が特に不安になるのが災害や事故のときだ。例えば乗っていた電車が停まっても、アナウンスは聞き取れず、何が起きているのかわからない。東日本大震災の際には障害者の死亡率が被災地全体の死亡率に比べて高かったというデータもある(宮城県の全死亡者数9471人/対宮城県の全人口比0・4%、宮城県の障害者の死亡者数1028人/同1・7%*2012年2月29日時点)。
女性は最近ようやく自分が障害を持っていることをまわりに言えるようになったそう。「言えないのは自分の課題だと思う。でも、私には葛藤がある。『障害がある』と認めたくない部分もある」と打ち明ける。「『助けて』と言いにくい。そういう人がいることも知ってもらいたい」
情報「見える形に」
首都直下地震は、30年以内に70%の確率で起こると言われている。女性が所属する認定NPO法人東京都中途失聴・難聴者協会(新宿区)では11月7日(土)に立川市の立川防災館で「災害への日頃からの備えと救急時の対応」をテーマにした、中途失聴・難聴者のための講座を開く。「障害がある方もまわりの方も参加してもらいたい」と担当者は呼び掛けている。
当日、講師を務めるのも聴覚障害者で、災害弱者の視点からの話がなされる。また、担当者は「聴覚障害者の半数以上は高齢者。障害者手帳を持っていなくても、聞こえに困っている方は多数います。高齢になれば誰でも聴力は落ちるもの」と説明する。「1対1の会話なら聞き取れても、大きな会場で話を聞くのが困難な方など、聞こえの症状は様々」とも。さらに「放送やメガホンを使って大きな音で話した内容も聴覚障害者には届きません。音声情報を目に見える形にして伝えることがとても大切です」と教えてくれた。
講座についての問い合わせは、同協会【電話】03・5919・2421、【FAX】03・5919・2563へ。
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