東京造形大学(宇津貫町)3年の杉本大地さん(22)=写真下=が先ごろ、映画界で新人の登竜門とされる「PFFアワード」でグランプリを獲得した。自分の視点を重視し、「臨場感」を演出した点などが評価を受けた。同賞を得て飛躍した同大学出身の映画監督・矢口史靖氏らのような活躍が期待される。
577作品の中から
「PFFアワード」は、映画の新しい才能の発掘を目的に1977年(88年から現称。「第1回ぴあ展('77自主製作映画展)」として発足)から始まった自主製作映画展。「ゼロの焦点」や「のぼうの城」を手掛けた犬童一心氏や「ウォーターボーイズ」の矢口史靖氏など、話題作を提供し続ける同大学卒の映画監督もこの映画展の入選をステップに飛躍を果たしている。今回は577作品の応募から、俳優で映画監督の奥田瑛二氏らが審査を行い、入選作品を決定した。
自身の経験をもとに
グランプリを獲得した杉本さんの作品「あるみち」は、美術大学に入学した青年の日常を描いた作品。杉本さん本人が主役を務め、自身の経験をもとにストーリーを構成。愛用の一眼レフの動画撮影機能での「自撮り」や「素人のカメラマン」である友人の撮影により作品づくりを進めた。「目標が定まらずに悶々としていた主人公が心躍る瞬間をみつけていく物語に仕上げました。自分の経験をもとにつくったので、作品に臨場感をもたせることができたのだと思います」と杉本さんは分析している。
作品を見た関係者のひとりは「杉本さんと実のお母さんが会話している場面はどこにでもある親と子の会話のようで演技とは思えなかった」と話した。
審査員の一人、小説家の阿部和重氏は「既存作に似せるというところにとどまっている作品が多いなか、杉本監督の作品はこの方からしか出てこないものが画面から伝わってきた」と評している。
授業課題がきっかけ
「熱中するものを見つけられると思って入学しました」と映画撮影などについて学ぶ同大学・デザイン学科映画専攻領域に通う杉本さん。昨年春、授業で映画のシナリオづくりが課題に出たことが今回の作品に取り組むきっかけとなった。「書いたことがなかったので、自分が『見た』『聞いた』ことしかつくれないと思い、自分の日常を題材に選びました」。予算は約40万円。半年に及んだ撮影期間中はアルバイトができずに生活費を工面するのに苦労したという。「目指すべきものが見つかると突っ走ってしまう性格なんですよ」。今後も自分が夢中になれるものを撮っていきたい考えだ。
次作のテーマは、友人を主役にした人間ドラマ。グランプリ受賞後、早速撮影を始めたという。「今回も自分が見たこと、聞いたことを生かして作品づくりにあたりたい」。処女作が大賞を得ても、おごらずに「自分の視点」を道しるべに「映画道」を歩んでいくつもりだ。
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