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芸妓小太郎さん 遠くても「一緒に生きる」 震災6年 被災地の両親へ

社会

掲載号:2017年3月9日号

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 東日本大震災から6年。被災地にゆかりの深い八王子在住の人は少なくない。八王子芸妓衆の小太郎さん(置屋菊よし)=写真=もその一人。宮城県気仙沼市の出身で高校生の時まで暮らした鹿折(ししおり)地区は震災・津波で壊滅的な被害を受け、実家は流された。小太郎さんが被災地の現状や今も仮設住宅で暮らす両親などについて語った。

続く「仮設」暮らし

 「壁がくる!」。震災当日、避難のため自宅2階へあがった両親は海を見て、近づいてくる津波に驚いた。急いで近所に呼びかけみんなで裏山へ走った。このような避難を想定し、父は山を花畑にし「逃げやすい」ようにしておいた。

 「ひとりぼっちになっちゃったかも」――。小太郎さんはあの日の夜、テレビで石油タンク等が流され火災が起き、燃えあがる故郷の映像を見た。両親と連絡はとれない。当時のことについて、今はそれ以外ほとんど記憶にないそうだ。

 両親はその晩、高台の家に身を寄せ、それから3日間そこで寝泊りをさせてもらった。その後、2カ所の避難所で合計6カ月生活をした。ようやく仮設住宅に移れたのは2011年秋のこと。しかし当初「3カ月」「半年」の予定だったが、復興計画の都合で結局「5年間」そこで暮らすことになった。

 「長屋のような住まいで、壁がうすく隣の人の咳払いも聞こえるくらい」と小太郎さんは説明する。「それでも音はしないんです。お互い気をつかって静かに生活しているので」。長い仮設住宅暮らしによる心労から父は心筋梗塞を患い、字が書けなくなってしまった。

 小太郎さんは両親に何度も八王子へ住むように呼びかけた。しかし現地にいて(復興の)情報を逃さないようにしていないと、と聞かなかった。「私がいこうか」「こっちは大変だから。お前が来てもやることないよ」と笑って返された。

 海と山に囲まれた「あたたかな」場所だった。幼い頃の写真も思い出もすべて海に流された。今年1月に見た故郷は瓦礫が取り除かれ、きれいに整備されていたが「面影がない。違う所へ来ているみたいでした」

伝えたい 感謝の気持ち

 「復興は進んでいるよ」と両親からのメッセージ。待望のマイホームが4月に完成する。「昨年の今頃に比べたら、だいぶ元気になりました」と小太郎さんは喜ぶ。「やっと普通の暮らしができる」――。家は2人に生きる希望を与えてくれた。「父は字を書けるようになりました」と嬉しい報告。ボランティアと地元とのパイプ役として活躍した母は今年、市から表彰を受けた。明るいニュースが続く。

 小太郎さんは年に2、3回、故郷に帰る。その際いつも被災地へたくさんのお土産が寄せられるそう。「みなさんの支援から『がんばる力』をもらいました」と頭を下げる。「本当に毎日『感謝、感謝』ですよ。母もよく電話口でそう言っています。みなさんに一番伝えたいのは『感謝』の気持ちです」。震災は自分と家族を見つめ直すきっかけになったという。両親への電話は今でも毎日欠かさない。「近くにいなくても『一緒に生きる』。共にがんばる道を選びました」。強い気持ちを胸に、小太郎さんは今日も舞台にあがる。
 

演舞する小太郎さん
演舞する小太郎さん

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