奉仕団体「東京八王子ロータリークラブ(RC)」(町田稔会長)では「理科好きの児童」を増やそうと、2009年から教育環境を整備する事業を継続的に行っている。工学院大学科学教育センター(中野町)が「理科大好き先生」を育てるために開く「スーパーサイエンスティーチャー(SST)養成講座」とパートナーシップをくみ、この講座を「熱心に」受講した教諭が在籍する市立小学校に実験器材等を寄贈している。今年も4月から5月にかけてRC会員が対象校(今回は7校)を訪れ、それぞれで顕彰式を行った。
教諭へ「教え方」
教諭のスキル向上とともに、学校は必要な教材を得ることができる同事業。RCとしては授業が充実し、子どもの理科への関心が深まることを期待する。
ヒントは10年ほど前のニュース番組だった。文科系の大学を出た小学校の教諭が「理科の授業が苦手」と打ち明けた。「不得意とは誰にも言えなかったし授業をするのが怖かった」「その悩みを話す場所すらない」――。番組ではその教諭がSST養成講座を受講するなどし悩みを克服したことを紹介した。
番組を通じ、「理科を教えるのが苦手な先生がいる」現状と、「同大学が理科の教え方を指導する講座を開いている」ことを知ったRCの堤吉久会員は、自身がクラブ会長になった09年、理科教育環境整備事業をはじめた。
30万円の実験器材
SST養成講座に参加した教諭の中から、理科教育スキルの向上に熱意のある人を委員会(同センターと共同で設置)で選考。5人を選びその教諭の在籍する小学校にそれぞれの実情にあった実験器材を贈る(最大30万円相当)。
東日本大震災の際に中断したことを除き(その際は被災地に器材を寄付)、09年から毎年続けており、顕微鏡、プロジェクター、人体骨格模型などをこれまで市内の小学校のべ40校へ寄贈した。その際必ず会員が学校に出向き、朝礼等に参加し、児童に「先生が努力をしたこと」などを伝えるようにもしている。
目に見えるもの大事
「大変ありがたいことです」。今回初めて事業に参加しプロジェクターや書画カメラを贈られた市立椚田(くぬぎだ)小学校(椚田町)の松尾了副校長は感謝する。松尾さんは昨年秋、同校の高山竜之介教諭と共にSST養成講座を受講。講座はLED、赤外線についての内容だった。高山さんは「100円均一の店舗で購入できるアイテムなどを使って実験していた。身近なものを利用することについて勉強になった」と振り返る。松尾さんは「理科は好きだが、難しくなるにつれ興味が薄れていく子が多い。器材を使うなどし目に見えるもので教えていくことが大事」と中学校の理科教諭であった自身の経験を元に話した。
またRCは16年、市内全小学校70校の教諭1600人に、同大学が作成した実験の手引きテキストを届けた。器材の寄贈と合わせこれまでの事業の総額は1000万円以上。堤さんは「もっと多くの小学校に参加してもらい、理科好きな子どもたちを増やしたい」と話した。
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