下恩方町で造園業にあたる山下力人さん(40)が、事情により伐採しなければいけなくなった庭木などの植物を、代わりに育てたいとする人に仲介する「植木の里親」探し請負人として奮闘している。費用は人件費など必要最低限にとどめ、「いずれ、集まった植木などが一堂に会する植物園をつくりたい」と山下さんは話している。
活動のきっかけとなったのは6年前。八王子市内で家の建て替えに合わせ、庭木の伐採を依頼された時だ。いざ作業に取りかかろうとした時、依頼主の女性が涙を流しながら庭木を見つめているのに気づいた。「その木には亡くなった主人の思い出が残っているんです」。そんな思い出が――。ではうちで一時預かります。反射的にそう口にしていた、という山下さん。
植木の移植は、土中深く張り巡らされている根を傷つけることなく移し替える必要があり、伐採する方が手間も費用も負担少なく済む。が、「お客さんの気持ち、植物を大切にしたいという思いが勝りました」と振り返る。その後も、同じようなケースに多く巡り合ったため、事情をもつ植物を一時預かり、代わりに育てたいと希望する人を探し仲介する「植木の里親」の取り組みを思いついたのだという。
TV露出で問合せ増
そして現在まで、300本を超える植物を預かり、仲介してきた。ただ以前は、里親探しは困難を極めていた。基本的に自社のHPだけで情報発信していたため、周知が不十分で思うように希望者が集まらなかったのだ。「自社のもつ一部土地を預かりの場としていたため、必然とキャパは限られ、もう預かる場所が無い、というところでした」
そんな状況が一変したのが今年。新聞やTVなどで活動が伝えられるようになったのだ。すると、問い合わせが増え、多くの「里親」たちが植物を見学に来るように。「メディアの力は大きかったですね。それが口コミとなって広がり、おかげで依頼も増えていきました」。最近では、遺品として「残したい」という問い合わせも増えているという。
スタッフも誇りに
都内のほか、神奈川、山梨など関東圏中心に依頼が増えるなか、思わぬ「効用」も見られるようになったという。一緒に活動する、山下さんが運営する会社に勤める5人のスタッフが活動に誇りをもち、同時に造園業にのめり込んでいくきっかけの一つになっているのだ。「お客様から感謝の手紙や電話を頂き、みんな励みになっているんです。里親さんからも『あの木からこんな花が咲いたよ』などの連絡が来るんですが、やっぱり嬉しいですね」
夢は、いずれ集まった植木などを一堂に会した、植物園をつくること、と話す山下さん。そこが、思いを預けた人、受けた人が集まる、つながりが生まれる場所にしたい、と話している。「これからですね。必ず実現させたい」
「植物園」への支援募集
山下さんが運営する造園会社「やましたグリーン」では引き続き、思い出ある植物の移植希望者、「里親」を募集しているほか、「植物園」建設のための支援を募っている。
問い合わせは、同社【電話】042・673・7230へ。
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