140年前の正月から「奇跡の歩み」を続けている樹木がある。南大沢・八幡神社のオオツクバネガシだ。1880年の正月に神社内で火災が発生し、建物と共に災禍に巻き込まれたものの、蘇り生き続けていることから、地域住民らからは「不死身のアカガシ」と呼ばれ親しまれている。
南大沢の八幡神社は他の神社仏閣同様、古くから周辺住民の拠り所とされてきた場所で、その境内でご神木として立つオオツクバネガシも住民らにとって街の象徴であり続けてきた。
1880年の正月に起こったのが神社の社殿を焼き尽くす火災。建物の大半が消失し、近くのオオツクバネガシにも火種が移ってしまったんです、と井上良胤宮司。そして、燃え上がるオオツクバネガシを見て「枯死してしまったと思われました」
ただ、社殿の再建工事が始まり、新しい建物が日に日に完成へと近づいていくのに合わせるように、オオツクバネガシが新しい芽をつけ始めるようになったのだ。そして、そんな強い生命力を前に住民たちはいつしかこのオオツクバネガシを「不死身のアカガシ」と呼ぶようになっていったのだという。
「その頃はこのオオツクバネガシを別種のアカガシと住民らは思っていたため、そのような名になったようです」と井上宮司。「火災により、木の幹に1平方メートルほどの空洞ができているのに生き続けている。もう樹齢600年を超えているよう。すごいのひと言です」
市の天然記念物に
そして、その評判が口コミとして広まり、1971年に八王子市の天然記念物に。評判が広がっていくと、「不死身」にあやかろうと神社に見物人が集まるようになっていった。この近年、八幡神社には正月三が日の間、8千人以上の人が参拝に訪れるというが、「不死身のアカガシ」効果が働いているのではないか、と神社総代の田中良雄さんは笑顔をみせ、「南大沢の駅から神社まで行列ができるんです」と笑う。
井上宮司は「この木は地域の守り神。これからも街を見守り続けてくれれば」と話している。
365日光合成可能
オオツクバネガシについて、鑓水・植日造園の代表で樹木医の資格をもつ、羽生沢邦男さんは「オオツクバネガシは丈夫で長持ちするので、昔から農具の材料などに使われてきた木なんです。常に葉をつけているので、365日光合成を繰り返すことができる。だから成長し続けられるんです」と解説する。
そして、「不死身のアカガシ」については、境内で他の樹木が少ない分、日光や水分などを独占できるのに加え、ご神木として地域から大切に保護されてきたことが長生きの秘訣では、と話している。
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