八王子市は昨年度末、子安神社(明神町)の湧水が流れる水路をJR八王子駅近くに2カ所開設した。織物のまちとして栄えた市の歴史を伝えようと企画。東京都が明神町に建設中の展示場「東京たま未来メッセ」敷地内にも水路が設けられ、水辺を再現する。
同展示場は、都税事務所や八王子市保健所を備えた市民向けの複合施設として、都が2018年度から整備。10月14日に開業を予定している。
子安神社には、コイの泳ぐ大きな「御神池」があるが、これは湧水がたまってできたもの。1日1千リットルが湧き出ているという。この水を有効活用しようと、八王子市は地下に導水管を通し、同展示場に整備した約60メートルほどの「せせらぎ水路」までこの御神水を流す計画だ。近隣の船森公園(明神町)にも水路が整備され、地上から見ることができる。
御神水は、同展示場を通過したあとは山田川に放流され、最終的には浅川にたどり着く。市水環境整備課は「河川の水量確保により、水生生物の生態系維持も期待できる」としている。
「歴史、伝われば」
市の資料によると、同展示場の場所には府立織染学校(1909〜1939年)があり、湧水を校内に引き入れて染色実習で活用したという。染色には大量の水が必要で、糸をよるのにも水力が使われてきた。織物産業は水と深い関係にあり、八王子の織物を支えてきたのが豊富な水だ。今回の「せせらぎ水路」はその再現ともいえる。
子安神社はその豊富な水量から、江戸時代には「桑都八景」の一つに数えられていた。昭和初期には舟遊びができ、涼を求める人々の憩いの場として親しまれたという。子安神社の由来は759年、天皇の后の安産祈願のために創建したとされる。同神社の禰宜(ねぎ)・松宮秀満さんは「水は生命の根源。水量の豊かさを見て『ここなら』ということで、安産祈願の場所に選んだのだと思う」と想像する。「メッセが完成すれば、展示会や学会などで全国、世界から大勢の人たちが訪れる。八王子の歴史について知ってもらうきっかけになれば」と期待を込める。
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