学びの先端って、どこ? 創価女子短大の場合 第5回 忘れられない上司
このコーナーは、創価女子短期大学(丹木町)で教える青野健作准教授に、学びの現場や自身の体験についてお話ししてもらうコーナーです。
今夏は本当に猛暑でした。気象庁によると平均気温は統計上最高を記録し、11月も夏日を記録するなど環境への関心は高まっているのではないでしょうか。
創価女子短大で環境問題を授業で扱うと、自身の外務省時代の生活を思い出します。TPP交渉に携わっていた当時、私は環境と貿易に関する分野を担当していました。皆さんご存じのとおり、交渉は難航を重ね、毎月のように海外出張、毎日のように深夜残業を繰り返していました。
そんなせわしない中でも忘れられない上司がいます。当時、経済連携課長だった松田誠さんという人物です。これまで何人もの優れた人たちと接してきましたが、特に松田課長の人格には感銘を受けました。非常に優秀な上司でしたが、印象に残っていることがあります。米国出張中、関係省庁と多くの交渉団で臨んだ会合で、松田課長は休憩時間に私の元にやって来ました。課長は私に交渉経緯の詳細を尋ね、真剣に、対等な目線で会話を重ねました。大交渉団の中心的な人物であったにもかかわらず、自分のような一担当官と同じ目線で、日本の将来を語ってくれたのです。「現場の一人ひとりを大切にする」。それを体現する方でした。しかし非常に残念ながら、TPP交渉も大詰めの中、松田課長は急逝されました。49歳の若さでした。
私も40代半ば。勤め先は教育現場に移りましたが、松田課長が背中で示してくれた「個人を大切にする」という姿勢は今の自分の軸になっています。「一人ひとりを大切にし、誰も置き去りにしない」という思いで、これからもSDGsの推進に尽力していきます。
(つづく)
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