広島に原爆が投下されて今年で75年を迎える。国内最大の被爆者団体の協議会である日本原水爆被害者団体協議会の一員であり被爆者の上田紘治さん(78・鑓水在住)は、2016年から市内を中心に核兵器廃絶を訴える国際的な署名活動(ヒバクシャ国際署名)をし、これまでに5500筆を集めた。国連総会の開催予定である今年9月に向けて、さらに署名を呼び掛けている。
署名 さらに呼びかけ20年前から語る
上田さんは被爆当時3歳であった。18歳で上京し、30年前から市内に住む。被爆体験の語り「実相」を始めたのは20年前。それまでは自身は当時の記憶を持たないため行っていなかったが、所属していた被爆者団体から要請を受け、始めた。母から聞いた物語を、市内外の小中学校で語ってきた。原爆経験を語るのはつらいことのため、被爆者のなかでも語り部になる人は5%だともいわれている。上田さんは記憶がないからこそ、当時のことを学び、事実に基づいた語りを目指しているという。
米で実相も
上田さんが署名活動を始めたのは「ヒバクシャ国際署名」が立ち上がった16年からだ。小中学校や、市内の政治団体、福祉施設などを訪れて呼びかけを行ってきた。活動を続けるうちに、「自分は上田ではなくヒバクシャという使命感が生まれた」と話す。
活動は国内のみならず、18年には、被爆者の訴えを伝えるため、世界21カ国の要人・平和団体を訪れる「ヒバクシャ世界一周 証言の航海」にも参加した。アメリカでは原爆を落としたことで戦争が終わった、と原爆投下に賛成する声もあるが、現地で実相を行うと涙を流す人も多く、語り終わったあとはハグの嵐だという。「実相は人の心を動かせる」と感じたと話す。
今年のうちに
17年7月7日、ニューヨーク国連本部の国際会議において、122カ国によって「核兵器禁止条約」が採択された。それを大きく後押ししたのが「ICAN」(核兵器廃絶国際キャンペーン)の運動とヒバクシャ国際署名であったと上田さんは説明する。この署名には1000万人分が集まっているが(昨年9月末時点)、目標は「世界で数億」という。一方、被爆者の平均年齢は83歳となり、高齢化が進む。核兵器廃絶を呼びかけるNGO平和首長会議は、被爆者が存命のうちにと20年までの実現を目指している。そのため、今年秋の国連総会までの署名を強く呼びかけている。
もう犠牲者うまない
世界にある核兵器は1万5000発以上といわれる。しかし、禁止条約が法的に拘束力を発揮するためには50カ国以上が批准をする必要がある。5月20日時点では38カ国が批准しているが、核保有国、アメリカと同盟関係にある核傘下国は署名すら行っていない。被爆国である日本も未署名だ。
八王子平和原爆資料館(元本郷町)の運営委員である水谷辰夫さん(68)は、署名については「一人一人は小さな力ですが、なんとか成し遂げたい」と話した。
上田さんは「被爆者の願いは、核のない世界を作りさらなる被爆者を絶対にうまないこと」と話す。実相の最終目的である「社会を動かすこと」にはまず署名が必要だという。
協力は「ヒバクシャ国際署名連絡会」HPまたは、上田さん【携帯電話】090・6197・5354へ。
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